「"極ノ番"というものを知っているかい?"領域"を除いた、それぞれの術式の奥義のようなものだ」


黒い玉を手に持ちながら、偽夏油は自身の極ノ番である"うずまき"について饒舌に話し始める。

スズや虎杖が息を殺して見つめる中、不意に彼は黒い玉を喉を鳴らして飲み込んだ。

と、上を向いた偽夏油の目に、箒にまたがった西宮の姿が映る。

そして彼女の箒にぶら下がるランプの点滅が合図になり、偽夏油に向けて一斉に攻撃が飛んできたのだ。

加茂の弓矢、真依の銃、そして三輪のシン・陰流…

だがその全てをいとも容易くいなすと、偽夏油は"うずまき"を発動した。


「待て!!」


虎杖が叫んだ次の瞬間…

西宮と三輪の元に日下部と歌姫が駆けつけ、何とか"うずまき"を回避する。

加茂と虎杖の方にはパンダが姿を見せ、スズもそのタイミングで駆け寄って来た。


「虎杖…で、いいんだよな?」

「! パンダ先輩!!と京都の!」

「よかった。戻ったんだな」

「パンダ先輩、ご無事だったんですね…!」

「スズ、さっきはありがとな」


近づいてきた後輩に少し笑顔を見せながら、パンダはそう言ってスズの頭を撫でた。

それから表情を切り替えると、加茂との会話に集中する。


「あの男が五条悟を…獄門彊を持っているのか」

「らしいぜ。あんな公害持ち歩いて何が楽しいんだか」

「何者だ」

「側は夏油傑、中身は知らねぇよ」


先輩コンビがそんな会話をしている間に、スズは虎杖の体をチェックする。

体のあちこちに尋常でない数の傷があり、出血も多い。

骨折も1本や2本ではきかないだろう…

常人ならとっくに死んでいていい状態であった。

だが今自分には何の力もなく、かすり傷1つ治すことができない。

代わりに…というにはお粗末過ぎるが、スズは虎杖の顔にベッタリとついている血を静かに拭き始める。


「ありがと、スズ。でも手汚れちゃうからいいよ?」

「…」

「スズ?」

「…ごめんね。悠仁がこんなにボロボロなのに、私何もしてあげられない…」

「! スズが謝ることなんか何もない!!もう俺は…十分過ぎるぐらい、スズからいろんなもん貰ってる。だからそんな顔しないで」


そう言って、虎杖は泣きそうになっている彼女の頬に手を添えた。

触れた先から感じる温かい体温に、ついさっき捨て去ると決めたスズへの想いがぶり返しそうになる。

その気持ちを抑え込むように、虎杖は握り締めた手に力を込めるのだった。



- 234 -

*前次#


ページ:

第0章 目次へ

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

第7章 目次へ

短編 目次へ

章選択画面へ

home