「久しぶりだね、夏油君。あの時の答えを聞かせてもらおうか…どんな女が好みタイプだい?」

「九十九由基!!」


降り注ぐ氷柱から虎杖達を救ったのは、4人の特級が1人…九十九由基だった。

それから2人は、"世界から呪霊をなくす方法"について話し始める。

呪力からの"脱却"。呪力の"最適化"。呪力の独占。

スズや虎杖にはどのワードも初耳で、訳が分からない。

そして長々と続いた会話の最後に、偽夏油は静かに不穏な言葉を吐いた。


「---非術師、術師、呪霊…これらはすべて"可能性"なんだ。"人間"という"呪力"の形のね。

 だがまだまだこんなものではないハズだ、人間の可能性は。それを自ら生み出そうともした。

 だがそれでは駄目なんだ。私から生まれるモノは、私の可能性の域を出ない。答えはいつだって、混沌の中で黒く輝いているものだ。

 分かるかい?私が創るべきは、私の手から離れた混沌だったんだ。既に術式の抽出は済ませてある。」

「! 真人とかいう呪霊がいるだろう!!魂に干渉できる術式を持った奴!!」

「さっきアイツが取り込んだけど。」

「マジんガ〜!??」

「"無為転変"!!」


偽夏油がそう言いながら地面に手をついた瞬間、空・陸を問わず術式が駆け巡った。

何をしたのかと問いかける九十九に、彼は答える。

"マーキング済の2種類の非術師に、遠隔で無為転変を施した"…と。

それはつまり、千人の虎杖悠仁が悪意を持って放たれたことと同義であった。

尚も九十九と偽夏油が話を続ける中、突如虎杖達を封じていた氷が音を立てて消え去った。

当然スズを覆っていた氷の檻もなくなり、すぐさま彼女は同期の元へ走る。


「悠仁!」

「スズ!出れて良かった。でも何で急に…」

「あの人に何かあったんだと思う。苦しんでるみたいだし。」

「ハッ…ハッ…」

「どうした裏梅。」

「…毒か!!」

「穿血で俺の血が混じったんだ。当然だ。」


氷の術式が解け、高専組は次々と体勢を整え始める。

だが偽夏油は一切焦る様子を見せない。

それどころか、また静かに話を始めるのだ。


「私が配った呪物は、千年前から私がコツコツ契約した術師達の成れの果てだ。

 だが私と契約を交わしたのは術師だけではない。まぁそっちの契約は、この肉体を手にした時に破棄したけどね。」

「まさか!」

「これがこれからの世界だよ。」


偽夏油がそう呟いた、次の瞬間…

彼の体から数多の呪霊が飛び出してくる。

そしてその呪霊に紛れ、彼は姿を消そうとしていた。

…手に、獄門彊を持ったまま。


「じゃあね、虎杖悠仁。木下スズ。」

「(獄門彊!?)五条先生!!」

「いや、行かないで…悟先生!!」

「(! スズの声に反応するか…最強も人の子だね)君達には期待しているよ。

 聞いてるかい?宿儺。始まるよ…再び、呪術全盛・平安の世が…!!」


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突如現れた呪霊に応戦する高専メンバー。

その喧騒の中、虎杖は不意に気がつく。

さっきまで傍にいた、温かい存在がいなくなっていることに…


「……スズ?」



第5章 fin.



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