「悠仁…」
「ん?」
「あ、あの…ちょっと、苦しい、かな…!」
「ごめん!久しぶりにスズの顔見たら抑えらんなくて…!平気?」
「だ、大丈夫!でも、あの…あんまり顔、見ないで欲しい…です。」
「! めちゃくちゃ赤いもんね。…もっと見せて?」
微笑みながらそう言って、スズの顔を覗き込む虎杖。
その行動にまたドキドキが増してアタフタするスズを、虎杖は穏やかな表情で見つめていた。
と、不意に聞こえてくる1つの声。
すっかり忘れられていたが、この場には登場人物がもう1人いる。
「悠仁、俺の存在を忘れ過ぎじゃないか?」
第82話 狩人
聞こえてきた声に反応してバッと後ろを振り返った虎杖は、少し笑みを浮かべている脹相と目が合う。
大好きな子と再会できた喜びで、彼の存在をすっかり忘れていた。
今までの自分のスズに対する言動を思い出して、今度は虎杖の顔に一気に熱が集まる。
「いや、脹相…その…あー…えーっと…」
「照れなくてもいい。悠仁に愛する人がいて、兄としてはとても嬉しいんだ。」
「あ、愛する人って…!」
「何だ、違うのか?」
「違くない!違くねーけど「スズと言ったか。」
「あ、はい!」
「脹相だ。弟のこと、よろしく頼む。」
「あ、え、は、はい…!」
「脹相、やめろって!」
「何をそんなに照れてるんだ。少し落ち着け。」
「オマエのせいだろ…!」
本当の兄弟みたいなやり取りをする虎杖と脹相に、スズの顔にも笑顔の花が咲く。
そんな2人と共に、スズはカオスな状態の街へと繰り出すのだった。
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外に出たスズは、脹相と共に高架下の直線道路に立っていた。
最初は五条が相手をした敵として出会ったのだが、次に見た時は虎杖の兄としてこちら側についていた。
その短時間で何があったのかと不思議に思いつつ、初めてまともに会話をする脹相にスズは興味を抱く。
話題の中心は、呪霊をおびき寄せるために街の中心へ向かった彼のことだった。
「脹相はさ、どうして急に悠仁のこと弟なんて言い出したの?」
「話せば長くなるが…端的に言えば、親が同じだからだ。」
「えっ…」
「オマエは悠仁の嫁になる女だからな…いつかゆっくり話そう。」
「うん。……って、ちょっと待って!嫁!?」
「あぁ、スズになら悠仁を任せられる。」
「何を根拠にそんなこと…!」
「オマエが聞かないからだ。…高専の連中はどうしたのか、と。」
「!」
「分かってるんだろ?悠仁が自ら離れたということを。」
「……悠仁ならそうするだろうって思ってた。だから少しでも早く合流しなきゃって…1人にしちゃダメだって…そう思った。」
「ふっ。だから任せられるんだ。」
"そろそろ悠仁が来る。俺の後ろに下がっていろ"
少し笑みを見せながらスズの頭を撫でた脹相は、そう言って表情を引き締めた。
直後2人の正面から、虎杖が大量の呪霊を引き連れ、もの凄いスピードで走ってくる。
「脹相!!」
「"穿血"」
「うわっ、すごい!一気に…!」
「悠仁。」
「…スズに近づくな。」
一直線になっていた呪霊を貫通させるように血を発動した脹相。
そしてスズの背後に迫っていた呪霊を重い一撃で倒した虎杖。
つい最近コンビを組んだとは思えないほど連携が取れた動きにスズは感動する。
同時に、以前とは比べ物にならないぐらい強くなった虎杖に対しても…
「(元々持ってる抜群の体術に、呪力がしっかり乗せられてる…!こりゃ化けたね。)」
「スズ!ケガしてない?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう!」
肩に触れながら心配そうに声をかけてくる虎杖に、スズは明るい笑顔を向ける。
彼の表情からは、自分に課した"スズを守る"という責務への強い想いが感じられた。
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