呪霊を片づけ一息ついていた2人の傍で、スズは不意に見知らぬ呪力を感じ取る。
バッと上を見上げれば、そこには金髪・ピアスで袴姿の1人の男が立っていた。
女ウケしそうな整った顔からは、西の匂いを感じる言葉が発せられた。
「恵君おらんやん。俺が一番乗り?そんなことあんの?トロすぎへん?」
「(誰だコイツ…今、伏黒の話したか?)…スズの知ってる奴?」
「ううん、見たことない。恵の親戚…とか?」
「(! 体ん中から悟君と両面宿儺の呪力…あの女が木下スズか。)君らも何してん。目立ちすぎやで。逃げる気ないん?」
「「逃げる?」」
「何や知らんのか。君、死刑やって。悟君の後ろだてがのうなったから。あとそっちの女子は幽閉やと。特級に関わりすぎや。」
可愛がってる弟とその嫁に関する不穏な内容に、脹相は一気に表情を険しくする。
だが話題に上がった当の2人は、以前猪野から聞いた言葉を思い出し、意外と冷静に事態を受け止めていた。
むしろ自分達のことよりも気になったのは、最初に出てきた同期の名前の方だった。
「俺が用あんのは恵君やから、ぶっちゃけ君らの生死はどーでもええねん。でもチョコマカされんのもアレやし、とりあえず足でも折っといたろかな。」
「…スズ、俺の後ろにいて。」
「うん…!」
「伏黒に何の用だよ。」
「死んでもらお思て。その前に一筆書いてくれると助かるねんけどな。」
聞き捨てならない言葉が聞こえ、スズと虎杖は瞬時に目の前の男を敵と判断する。
戦闘態勢に入る兄弟コンビだったが、気づいた時には、金髪男がすぐ隣に立っていた。
彼の動きを捉えることが出来たのは、呪力把握を得意とするスズだけであった。
「(へぇ〜この速さを追えるんや。悟君のお気に入りなだけあるわ。)恵君、君らを捜してるんやって。」
そう言いながら、金髪男は虎杖と脹相に対し打撃を繰り出す。
自分達の間に立っている相手に対し、同時に攻撃を仕掛ける2人だったが、その打撃は空を切った。
男はいつの間にか、スズ達から1m程離れた位置に立っていた。
「速いっちゃ速いんだけど…なんか変だな。」
「術式だろうな。スズは追えてるのか。」
「何とか。姿っていうより、呪力を追ってる感じだけど。」
「(器と女はまぁ分かるとして、となりのは何者や…)思ったよりやりよるんやね。正直ナメてたわ。もうちょい速うしてみるか。」
両者が再び動こうとした、その時…!
辺りを異様な呪力が包み込む。
五条かと思うほどに大きな呪力は、不気味さにおいて彼のそれを上回っていた。
しかしスズは、その呪力に懐かしさを覚える。
目を向けた先にいたのは、彼女が心に思い描いた人物であった。
「あれ?1人じゃないんだ。」
スズと虎杖に対する処分の執行人・乙骨憂太が、そこに立っていた。
to be continued...
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