高専へと戻った5人は、以前虎杖が身を隠していた際に使用していた地下室へと向かった。
階段を降りれば、そこには久しぶりに見る顔が…
ハロウィンのあの日虎杖達を救った特級呪術師・九十九と、容姿が大きく変わった真希が5人を迎えた。
第86話 裏
長かった髪は短くなり、顔全体に火傷の痕、右目には未だ包帯が巻かれた痛々しい状態の真希。
同期である乙骨はもちろん、スズもまた呪力で感じていた以上にボロボロな先輩の姿に不安になり、彼女に駆け寄った。
「真希さん!!もう動いていいの?」
「応。問題ねぇ。」
「先輩…生きてて良かった…」
「どの口が言ってんだよ。オマエだって死にかけたくせに。」
「私は全然…!呪力を使い過ぎただけで…」
「呪術師にとってそれは致命傷だろ?ったく…五条が知ったら血相変えて飛んでくるわ。」
「…気をつけます。」
「そうしろ。何はともあれ…無事で良かった。おかえり、スズ。」
そう言った真希は、少し微笑みながら可愛い後輩の頭を撫でた。
彼女の優しい言葉と手の温かさに、スズは涙を堪えながら笑顔を見せるのだった。
そんな2人のやり取りを聞いていた九十九が、何かに気づいたようにスズへと声をかける。
「あ〜君がスズちゃんか。」
「はい。九十九さんですよね?」
「そっ!あの時はロクに話せなかったから、ほぼ初めましてだね。」
「そうですね。その節は悠仁達のことを守って下さって、ありがとうございました!」
「いえいえ。…風の噂で聞いてるよ。」
「?」
「五条君が君にベタ惚れだって。」
「えっ!あ、いや、そんな…!」
「ふふふ。あの五条悟が好きになるなんて、どれだけトリッキーな子なのかと思ったら…すごく普通だね。」
「普通…」
「もちろん良い意味でだよ。優しくて穏やかで仲間想いの、笑顔が可愛い普通の術師だ。」
「あ、ありがとうございます…!」
「(いい趣味してるじゃないか、五条君。)これからよろしく!」
「よろしくお願いします!」
笑顔で握手を交わしたスズと九十九が落ち着くのを待って、真希は伏黒へ天元様の結界について問いかける。
兎にも角にもこの問題が解決されなければ、質問する以前に会うことさえ出来ないのだ。
「恵、天元様の結界の話は。」
「それは…」
「俺から話そう。扉から薨星宮の途中には、高専が呪具や呪物を保管している"忌庫"があるな。
忌庫には俺の弟達…膿爛相・青瘀相・噉相・散相・骨相・焼相の亡骸がある。
亡骸でも6人も揃えば、俺の術式の副次的効果で気配くらい分かるハズだ。」
「Good!!」
「それはいいとして…コイツは誰だ。」
「とりあえず俺の……兄貴ってことで…」
「! 悠仁ー!!!」
思わぬタイミングで聞きたかった言葉を耳にし、脹相は嬉しさを抑えきれない。
そんな彼と目を合わさないようにしながら、虎杖は皆を外へ促した。
スッと隣に並んだスズに対し、脹相は静かに話しかける。
「スズ、今の聞いたか?」
「うん。脹相、嬉しそう!」
「あぁ。録音しておけば良かった。したか?」
「してるわけないでしょ。」
「そうだよな。…まぁいい。あとはオマエが悠仁の嫁に来れば、俺はいつ死んでも悔いはない。」
「またそれ言う…!」
なかなか出てこない2人の名を呼ぶ虎杖の声に応えるように、スズと脹相は急いで地下室を出て行くのだった。
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