全員で現状の把握と整理を終えると、次に必要になるのは各自の動きをどうするかだ。

後輩であるスズ・虎杖・伏黒、同期の乙骨、そして九十九に脹相…

真希は皆に視線を向けながら、静かに話し始めた。


「由基さんと脹相は、ここに残って天元様の護衛。私はまず禪院家に戻って呪具の回収。

 悟が封印されて間もなく、高専忌庫の呪具は加茂家と禪院家が持ち出してスッカラカン。だが恵が禪院家の当主になった。」

「お!?」「えっ!?」

「…後で説明する。」

「お陰で禪院家の忌庫は漁り放題…でもその前に、天元様。」

「分かっている。組屋鞣造の工房アトリエだろう?」

「助かります。用が済んだらパンダ捜して、回游の平定に協力する。憂太は?」

「僕は早速結界コロニーに入って回游に参加するよ。」


仲間が参加する前に少しでも情報を集めたいと、乙骨はいつもの穏やかな顔でそう告げた。

そして結界で電波が断たれた場合、しばらく連絡が取れなくなる可能性があるとも…

これを受け、虎杖と言葉を発した本人はある約束事を思い出す。


"もし次俺が宿儺と代わったら、迷わず殺してくれ"


乙骨と容易に連絡が取れないとなれば、もしもの場合にこの約束が守れなくなる。

かと言って2人を組ませては、単独で動ける乙骨の戦力が勿体ない。

"ん〜"と難しい顔で悩む虎杖に対し、当の伏黒はいたって冷静だった。


「言ってる場合か。大丈夫だ。そん時は俺が死んだ後、しっかり殺してもらえ。」

「(いや、そうならないためにさァ…)」

「私が悠仁の傍にいる!」

「「「!」」」

「憂太先輩の代わりはできないけど、他の人よりは多少話を聞いてくれると思うから…!」

「いや、むしろ僕よりも適任だよ。やっぱりスズちゃんにも頼んでおいて良かった。」

「スズ、本当にいいの…?確かに宿儺はスズのこと気に入ってる。でも万が一…ってこともある。」

「そん時はそん時!できる限りのことをするって約束したでしょ?まだ何の役にも立てないから、こういう形で2人を守らせて欲しい。」


そう言って自分達に優しい笑顔を向けるスズを、虎杖と伏黒は愛おしそうに見つめる。

揃ってお礼を伝えれば、"任せなさい!"と自分の胸を叩くスズ。

場にそぐわない彼女の茶目っ気ある行動に、天元を含め皆の口元に笑みが広がった。

さっきまでとは質の違う落ち着きを取り戻した伏黒は、自分達の行動について確認する。


「先輩。」

「あぁ。オマエらは予定通り金次のとこ行け。」

「金次?」

「秤金次。停学中の3年生だよ。」

「今はとにかく人手が足んねぇ。なにがなんでも駆り出せ。」

「その人強いの?」

「ムラっ気があるけど、ノッてる時は僕より強いよ。」

「それはナイ。スズも会うの初めてか?」

「はい。噂ではいろいろ聞いてますけど…」

「そうか。でも向こうはスズのこと知ってっかもな。」

「えっ…」

「さっき由基さんも言ってたけど、悟のお気に入りだって話は結構あちこちに出回ってるからな。興味を持たれてるかもしんねぇ。」


"絡まれても無視していいぞ"

不安そうな顔になったスズの頭を撫でながら、真希はそう言って笑顔を見せた。

そうして各々の動きが決まると、高専メンバーは早速出発する。

と、不意に足を止めた虎杖が後ろを振り返る。


「脹相!!」

「!」

「ありがとう。助かった。」

「…死ぬなよ。」


虎杖の言葉を嬉しそうに噛みしめる脹相に、スズも思わず笑顔になる。

また会えることを信じて、若人達は力強い足取りで外へと出て行くのだった。


「泣いてんの?」

「…」

「…泣いてない。涙は悠仁とスズの結婚式に取っておくんだ。」

「スズもこんな義兄がいたんじゃ苦労するね。」



to be continued...



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