パンダとの試合に勝利した虎杖は、その後も次々に勝ち星を上げた。
試合が進む度に、体が弱い設定をすっかり忘れたスズの応援にも力が入る。
そして最後の1人を打ち負かし優勝すると、ついに胴元との面会が許可された。
第90話 潜入 〜 きらきら星
最後の試合を終えた虎杖の元に、前髪パッツンの可愛らしい女性が声をかけてくる。
胴元がいる場所に案内するからついて来てと言われ、虎杖はスズと共に彼女の後をついて行った。
「悠ちゃん、まだ高1なんだぁ。ってことは弟くんは中学生?」
「あ、はい。そうです。」
「(悠ちゃん…)」
「2人とも若いねぇ。金ちゃんは中学ダブってるんだよ。」
「…なんか嬉しそうっスね。」
「フフ、まぁね。金ちゃんが久しぶりに熱くなってるからね。私はね、熱い金ちゃんが大好きなの。」
そんな会話をしながら、3人は屋上に広がる駐車場を進んだ。
そうして辿り着いた1つのドアの前で、パッツン女子は扉を開けて虎杖に入るよう促す。
「廊下の奥にもう1つドアがあるから、そこに行って。その中で金ちゃん待ってるから。」
「押忍。」
「お邪魔しま〜す。」
「あ、弟くんはダメだよ。金ちゃん2人で話したいって言ってたから。」
「えっ。」
「あの聞いてるか分かんないっスけど、弟は体が弱くて…離れたくないんです。」
「そんなに長い時間じゃないから大丈夫。私がちゃんと見てるし、何かあったら連絡するから。」
何とかスズと離れないようにしたいと考えを巡らす虎杖だったが、いいアイデアなんてそんなにすぐ浮かぶわけもない。
チラッと視線を隣に向ければ、スズも同じように悩んでいるように見えた。
が、次の瞬間スズは虎杖の方へ笑顔を向けた。
「お兄ちゃんだけいいな〜あとで金ちゃんさんがどんな感じだったか教えてね!」
「あ、おぅ!でも…本当に大丈夫?」
「今日は体調も安定してるし、お姉さんもいるし…大丈夫。」
いろんな意味を込めたスズからの"大丈夫"は、虎杖にしっかり伝わった。
お互いのことを気遣うようにアイコンタクトを交わし、2人は一旦別れるのだった。
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パッツン女子こと星綺羅羅と一緒にドアの前を離れたスズは、そのまま来た道を戻り始める。
潜入前に感じていたもう1つの気になる呪力の持ち主は、間違いなく今目の前にいるこの女子。
直接関わってそう確信したスズは、秤と彼女が離れていることを伏黒に伝えたいのだが、こうも一緒にいられてはスマホを触ることすらままならない。
他に手段はないかと考えていた矢先、見知った呪力が近づいてきていることに気づいたスズ。
「(嘘…恵!?と、パンダ先輩も!ヤバイ、このまんまじゃ鉢合わせる…!)」
「弟くん、大丈夫?具合悪いの?」
「いえ、大丈夫です!それより…この駐車場何か立体的ですけど、あっちの方ってどうなってるんですか?」
「気になる?」
「はい!」
「じゃあちょっと見学ツアーしちゃおうか!」
「やった!(少しでも気を引かないと…!)」
「…いや、待って。」
「え?」
なるべく伏黒とパンダから距離を取ろうとしたものの、そう上手くはいかないもので…
突然バッと上に視線を向けた綺羅羅は、かつての後輩であるパンダを発見してしまう。
そして当然隣にいる伏黒にも気がついた彼女は、彼が虎杖と一緒にいた人物であることを思い出す。
パンダは高専関係者、なら隣にいる男も同じ。そしてその彼と一緒にいた虎杖もまた高専関係者。
瞬時にそう判断した綺羅羅は、大切な秤を守るためスマホを手に取った。
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