何度全力で殴っても立ち上がる虎杖に、さすがの秤も戸惑いを見せる。

変な汗が出るのを感じながら、彼は問いかけた。


「何製だよ、オメェは。」

「俺は部品だ。部品には役割があんだろ。呪いを祓い続ける俺の役割…それに秤先輩が必要だっていうのなら、アンタが首を縦に振るまで付き纏う。

 先輩、アンタの役割は何だ?」

「(コイツ…!!これが部品の"熱"かよ…!!)いいぜ何発でも…」

「金ちゃん。…熱くなってるんじゃない?」

「(…"熱"に嘘はつけねぇ!!)…オマエら降りてこい。」

「「「!」」」

「取引だ。」


綺羅羅の一言で、秤は元の冷静な状態に戻った。

彼の言葉に誰よりも早く反応したスズは、すぐさま今いる場所を飛び降りて虎杖に駆け寄る。

必死に気持ちを抑え、自分を見守ってくれていた彼女の姿が視界に入ると、気が緩んだのか少しよろける虎杖。

そんな彼を支えながら、スズは優しく声をかけた。


「悠仁、大丈夫?」

「平気。…最後まで見守っててくれてありがとう。」

「私は約束を守っただけ。…でもこんなになるなんて聞いてない。」

「あー…それはごめん。」

「だから今度は私のお願い聞いて。」

「あ、うん。スズのお願いなら何でも聞くけど…」

「よし!じゃあ治療させて。」

「! それはダメ!!まだ呪力回復してないのに、俺なんかに使っちゃ「今何でも聞くって言ってくれたよね?」

「いや、それは…そういうお願いだって知らなかったから…何にしてもダメ!それ以外なら何でも聞くから!」

「……悠仁さっき、部品には役割があるって言ってたでしょ?あれさ、きっと私には2つの役割が与えられてるんだと思う。」

「2つ?」

「そう。1つは悠仁と同じ、呪いを祓うっていう役割。で、もう1つは…部品を直す役割。」

「!」

「直す人がいないと、部品はいつか動かなくなる。壊れたままじゃ、ちゃんと役割を全うできないでしょ?」


"だから私の言うこと聞いてください"

穏やかな笑顔と口調でそう言われ、虎杖は面白いぐらい見事に足の力が抜けその場に座り込んだ。

微笑みながら目線を合わせるようにしゃがむと、スズは治療のために手をスッと前に出す。

と、その手を恋人繋ぎのようにして掴んだ虎杖は、そのまま手を引いてスズを自分の腕の中におさめた。


「おわっ…!ゆ、悠仁!?」

「(もうスズのこと好きになりたくない。これ以上好きになっても、自分がツラいだけだ。

 そう頭では分かってるのに、スズのことになると自分の感情が抑えられない。

 今スズへの想いを声に出したら、きっと今朝みたいに止まらなくなる。だから代わりに…)ありがとう、スズ。」

「ふふっ。どういたしまして!」


明るいスズの声を聞き、虎杖は彼女を抱き締める力をさらに強くした。

秤から冷やかしの声がかかるまで、あと15秒…!



to be continued...



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