「オイオイオイ…俺は何を見せられてんだ?」
「! あ、いや、これは…そういうんじゃ…!」
「最近のガキは手が早いね〜」
「違ぇって!!」
秤の前だということをすっかり忘れてスズを抱き締めていた虎杖だったが、彼の言葉で一気に現実へ戻される。
さっきまでのひりついた雰囲気はどこへやら…
どこにでもいる先輩後輩のようなやり取りをする2人を、微笑ましく見つめるスズなのだった。
第92話 コガネ 〜 結界
その後上から降りてきた伏黒達と合流し、秤を囲んでの話し合いが始まった。
スズは虎杖の隣に座り、止血のため鼻にティッシュを詰めてから反転術式を開始する。
久しぶりで不安もあったが、今までと変わらず使えることに、スズは人知れずホッと息を吐いた。
話題はまず最強呪術師の封印のことから…と思われたが、その前に秤は1つ気になることがあった。
「…木下」
「はい!」
「オマエ、反転術式使えんの?」
「使えます。他の皆とは帯びてる呪力が逆なので、こちらの方が本職というか…得意です」
「変な感じがすると思ったらそういうことか。…でもオマエ、負の呪力もあるよな?つーか、五条さんいねーか?」
「すごいですね!います。私の中の負の呪力は先生由来なので。あと…呪いの王様のも少々」
「(! 体内に何かすげー奴2つも抱えてんのかよ。おまけに反転術式使い…おもしろっ!)じゃあ…」
「スズのことは一旦置いといてください。いろいろ報告することがあります」
放っておけばスズを質問攻めにしそうな秤を止め、伏黒はこれまでの経緯をかいつまんで話し出す。
何を置いても伝えなければいけないのは…
「マジで?五条さん封印されたの?」
「「「マジです」」」
「かぁーっ!!」
「あとついでのようで悪いが、学長も死んだ」
「!!」「パンダ先輩?」
「スマン、黙ってて。だが本当だ。…スズはだいぶ前に分かってただろ?」
「……はい。呪力がなくなるのを感じたので…」
「うん。大丈夫だ、虎杖。渋谷でじゃない。あの後上とゴタついてな」
「なら良かったとはなんねーよ。だって学長はパンダ先輩の…」
「それも含めて"大丈夫"だ。ありがとな。スズも、俺のタイミングで話させてくれてありがとう」
「いえ、そんな…!」
「オマエがそう言うなら俺達はなんも言えねーよ」
「ね」
「にしても世話んなった人らが悉く……分かった。死滅回游の平定には協力する」
秤のその言葉に、スズ達4人は安堵の表情を見せる。
未だ続いているカオスな状況の中で、味方は1人でも多い方がいい。
秤の首を縦に振らせた功労者の治療を終えたスズは、周りの会話を邪魔しないよう小声で話しかけた。
「よしっ、終わった。痛いとこない?」
「うん、もうバッチリ!ありがとう。スズは呪力平気?」
「このぐらい全然!…秤先輩のこと、ありがとう。悠仁のお陰」
「俺は殴られてただけだって」
「そんなことない。悠仁の想いが伝わったからだよ。本当にありがとう」
「スズがそう言ってくれんなら…どういたしまして!役に立てて良かった」
「おーい!オマエらまたイチャついてんのか?話聞いてろよ?」
互いに笑みを向け合っていたスズと虎杖は、先輩からのお言葉にサッと表情を切り替える。
2人が話している間に、どうやら話題は秤が持ちかけた取引のことになっていたようだ。
自分が平定に協力する代わりに、呪術規定を変えることに協力しろと。
「どうあれ、そこまで難しくはないと思いますよ」
「あぁん?テメェに何が分かんだよ、ウニ頭。コラ」
「俺、禪院家当主です」
「あ、そぉ?
(オイオイオイオイ…マジか!?2人にゃ悪いが今日一ビビったぜ。御三家がバックにつけば、規定の改訂に口出しなんてちょちょいじゃねぇか。
加えて木下は五条さんのお気に入り…御三家のうち2つ押さえてたらもう勝ちだろ!
おまけに呪いの王様とかいうのとも関係持ってるし。木下1人で特級レベルが2人動かせるってことかよ…使い方によってはすごいことになるな)
ウニ頭!!」
「伏黒です」
「伏黒君!!そしてスズちゃん!!…仲良くしようネ」
「「……はい」」
突然の申し出と呼び方に戸惑いながらも、スズと伏黒は揃って言葉を返すのだった。
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