「そういえばさっき途中で話終わっちゃったけど、ルール追加できたって言ってたよね?」
「うん!点の受け渡しができるようになった。」
「さっすが〜!ありがとう!恵もきっと喜んでるね。」
「だよな!でも姉ちゃんのためには、もうひと踏ん張りか。」
「そうだね。早く合流して、次の動き決めなきゃ!」
そんな会話をしながら、スズと虎杖は伏黒の元へ急ぐのだった。
第95話 東京第1結界B
時は少し遡り、スズと虎杖が合流する40分程前のこと。
主と別行動を取った天津麻羅とクグノチは、一足早く伏黒の呪力を感じる場所…新宿へと到着した。
更に呪力を辿っていくと、とあるマンションに行きつく2人。
それを見計らったかのように、大きな爆発音が鳴り響いた。
「ちょっとぉ!!俺もいるんだけどぉ!!」
「死んだ?」
「げほっ…!」
充満している煙の中から出てきた伏黒は、軽傷ではあるものの、あちこちに火傷や無数の傷を負っていた。
そして落ち着く間もなく、前方から飛んできたレシートが突如液体へ変わり彼に降りかかる。
「(この臭い…!)ガソリンか!!」
さらに追い打ちをかけるように、先程爆発を仕掛けてきた男が再びその種を撒く。
自身の歯を伏黒の方へ投げると、それはもの凄い威力で爆発を引き起こしたのだった。
咄嗟に目を瞑った伏黒は、痛みも衝撃も来ないことに疑問を抱き目を開ける。
そこには金属でできた壁が、彼を守るようにそびえ立っていた。
「これは…?」
「ガソリンをかぶった人の周りで爆発を起こすなんて最低です。燃えちゃうじゃないですか。」
「天津麻羅!?」
「うわ〜ガソリン臭いです〜。せっかくのイケメンが台無しですね〜恵。」
「クグノチまで!スズの呪力戻ったのか!?」
「はい。久しぶりの完全復活です。詳しい経緯はまた後でゆっくり。まずはクグノチの治療を受けてください。」
「分かった、ありがとう。でも1つだけ…スズは無事なんだよな?ケガとか、そういうのは…」
「大丈夫、傷一つないです。」
「恵がだ〜い好きなスズのままですよ〜」
「うるせぇよ…!でもそうか…良かった。」
「ニヤニヤしてないでこっち来てくださいね〜じゃあ天津麻羅、少しお願いしま〜す。」
「えぇ、任せてください。」
爆発男こと黄櫨とレシートを扱うレジィ・スターなる男の相手を一旦天津麻羅に任せ、クグノチはすぐ横にあった部屋へ伏黒を連れて行く。
流れで近くにいた謎の女も連れて部屋に入ったクグノチは、伏黒の治療をしながら彼女について問いかける。
今でこそ意識が朦朧としている状態だが、話を聞けばこの女に騙されてここまで来たとのこと。
「恵はスズのことが好きなんじゃないんですか?」
「…好きだよ。」
「ならどうしてこんな女に引っかかるんですか〜?スズより魅力があるとは思えないですけど。」
「そういう理由でついて行ったわけじゃない。日車の居場所を知ってるって…」
「だからって簡単に信じちゃダメですよ〜」
「悪かった…」
「反省してるみたいだから今回は許してあげます。スズよりこっちを選んだとか言ってたらタコ殴りにしてました〜」
「それは天地がひっくり返ってもねぇよ。スズとは比べる価値もないような女だ。」
「ふふっ。スズのこと好きですか〜?」
「好きだって言ってるだろ。何回聞いてくんだよ。」
「だって恵ってあんまりそういうの言葉にしないじゃないですか〜だから何か新鮮で〜」
「確かにそうかもな。何か…早くスズに会いたい。」
「会ったら何て言うんですか〜?」
「ふっ。好きだって言うよ…何回でも。」
結界に入ってから、終始イライラ・ピリピリしていた伏黒。
しかし天津麻羅やクグノチからスズの話を聞き、ようやく少し心が穏やかになった。
会話の中で"好き"という言葉を口にする度に、彼女への想いが自分の中で溢れて、体が温かくなっていくのが分かる。
そのキッカケをくれたクグノチに感謝をしながら、伏黒は治療を受けるのだった。
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