白虎に乗り、虎杖と共に新宿方面へ向かっていたスズ。

現地が近づくにつれて呪力把握がしやすくなり、伏黒の状況が分かってくる。

かなり大きな呪力がぶつかり合うのを感じた後、彼の呪力は限りなく弱まっていた。

そんな現状を虎杖と共有しながら先を急いでいたスズは、突然盛大な爆発音を耳にする。

揃って視線を向けた先で、とある人物が戦っていた。





第96話 東京第2結界@





数分後。

戦いが終わったのか、突然2人の目の前に変わったコスチュームに身を包んだ男が現れる。

瞬時に警戒レベルを上げた虎杖は、白虎の背から飛び降り、スズを守るように男の前に立った。

だがその警戒心はすぐに無駄足だったと分かる。

悪人面とは程遠い顔、お気楽な話しっぷり、何とも言えないダサいコスチューム…

これが敵なら、相当なやり手である。


「…大丈夫そうだな。」

「うん、私もそう思う。」

「コソコソ話してる君達は付き合ってるのかな〜?」

「付き合ってねーよ。おっさん、誰だ?」

「俺は羽史彦!御年35歳!ふ〜む…」

「何だ?」「どうかしました?」

「俺は面を拝めば相手が善か悪か分かる。君達は…善だ!!さっきの少年とは真逆の顔つきだな!」


羽の言葉に、スズと虎杖は顔を見合わせる。

この辺りをウロついている少年はそう多くない。

おまけに"さっき"会ったとなれば、それは限りなく伏黒である確率が高い。

見た目の特徴を伝え、会ったことがあるか尋ねれば、案の定心当たりがあるとのこと。


「彼は私達の仲間なんです。今すごく危険な状況で…探すのを手伝ってもらえませんか?」

「頼む、おっさん!人手は少しでも多い方がいいんだ。」

「もちろん協力するさ!ヒーローはいつだって、子供達の笑顔を守るためにいる!」


そう高らかに宣言する羽を仲間に加え、一行は伏黒の捜索を続けた。

と、それから10分も経たないうちに、スズは自身の式神の気配を感じ取る。

キョロキョロと見渡せば、何かを抱えて空を飛ぶ天津麻羅とクグノチを発見した。


「天津麻羅!クグノチ!」

『スズ!』

『あ〜合流できて良かったです〜』

「なぁ!その抱えてんのって伏黒か!?」

『えぇ。かなり重症で、今この方に案内してもらって休める場所へ向かってたとこです。』

「(この方って…見た目は完全に天使、だよね…)分かった!私達もこのままついてく!」


こうして無事に合流できた2組は、共に休息の地へ向かうのだった。


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天使こと来栖華が案内した場所は、高級ホテルの最上階、さらに言えばスイートルームだった。

広々とした室内には品のある家具がセンス良く配置され、伏黒を寝かせたベッドもキングサイズだ。

物珍しそうに部屋をウロウロする虎杖達を追い出し、スズは治療のため一旦ベッドルームに引きこもる。


「こんなボロボロになって、どんな戦い方したのよ…」


優しく伏黒の頭を撫でながら、静かにそう呟くスズ。

"命があって良かった…"と少し笑みを見せると、スズは反転術式を開始した。

それから約1時間…途中で休憩を挟みながら、何とか伏黒の治療は完了する。

ヘロヘロで部屋を出てきたスズを、虎杖はすぐに支えて椅子へと座らせた。


「スズ、お疲れ…!大丈夫?」

「ありがとう。ちょっと貧血っぽくなってるだけだから平気だよ。」

「めぐ…伏黒さんの状態はどう、ですか?」

「ケガは全部治ってます。体の疲れが取れれば、目が覚めると思います。」

「良かった…ありがとうございます。」


虎杖や来栖とそんな会話をした後、スズは30分程仮眠を取る。

そして目覚めると、突然"東京第2結界に行く"と言い出した。


「それって、パンダ先輩達の様子見に行くってこと?」

「うん。うっすらだけど、先輩の呪力が乱れてる気がして…こっちの状況を伝えるためにも、少し行ってみようかなって。」

「……行って欲しくない。」

「悠仁…」

「1人で行くなんて危なすぎる。起きてたら、伏黒も絶対反対すると思う。」

「…」

「…でも、こういう状況でスズが言うこと聞かないのも知ってる。」

「!」

「たぶんパンダ先輩達も、スズが結界を行き来できるって知ったら、来て欲しいって言うと思う。」

「…うん。」

「気をつけてね。…絶対無茶なことしないで。」


虎杖はスズを優しく抱き寄せると、耳元でそう囁いた。

彼の背中に手を回し、スズは"はい"と穏やかに返事をするのだった。


「虎杖。」

「ん?」

「君はあの子のことが好きだろう?」

「…うん、好きだよ。命に代えても守るって決めてる。」

「ほぉ〜!いいね〜青春だな!!」


自分が出発した後のホテルでそんなやり取りが交わされていたとは知らず、スズは朱雀と共に東京第2結界へと向かった。



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