「何だ、今の音!?」

「秤先輩がいる方からです…!」


とんでもない大きさの爆発音に、顔を見合わせるスズとパンダ。

音のする方からは、秤と鹿紫雲の呪力がバシバシ流れて来る。

パンダを肩に乗せると、スズは猛スピードで現場へと向かった。





第97話 東京第2結界A





海辺に近づくと、爆発によって舞い上がった水飛沫が雨のように2人へ降り注ぐ。

視界が悪い中で秤を捜そうと目を凝らすが、その姿はなかなか見つけられなかった。

と、そんな2人の耳にドチャという嫌な音が聞こえてくる。

目を向けた先には、男性のものと思われる左手が落ちていた。


「…!」

「これ…秤先輩の…」

「生きてる、よな…?って、スズ?その手どうすんだ?」

「持って行きます。本人が生きてれば、反転術式でくっつけられると思うので!」


驚くパンダに力強くそう告げたスズは、落ちていた手を大事そうに抱えた。

そしてそのまま秤の呪力を感じる方へと足を進める2人。

目の前にある柵を越えたその先に、ようやく捜していた人物を発見した。


「秤!!」「秤先輩!!」

「パンダとスズか。」


急いで駆け寄れば、秤は激戦の後とは思えない程に普通に接してきた。

もちろん全身傷だらけだし、想定通り左手は失われている。

だがそれを感じさせないぐらいに、彼は通常運転だった。


「パンダ、なんか可愛くなったな。つーかスズ!オマエは何でここにいんだよ!」

「あ、それは、その…いろいろとありまして。あとでゆっくりお話します。それより手が…!」

「平気平気。いや〜オマエには感謝だわ。」

「へ?」

「戦う前にオマエがいるって知ったからさ、ガンガン無茶できたのよ。」

「いや、無茶し過ぎですって!手なくなってますから!」

「でも…治せんだろ?俺の手、大事に抱えてくれてるしよ。」

「治せますけど…そういう問題じゃないです!もう…!」

「怒んなって!それより、コイツ仲間になったから。」

「「はぁ!?」」


残った右手で後ろにいる鹿紫雲を指さしながら、秤は衝撃的な内容を伝えた。

さっきまで殺し合いをしていた相手が、どういう理由で仲間になるのか…

急転直下の出来事に、スズもパンダも開いた口が塞がらない。


「タダでなったわけじゃねぇ。」

「分かってるよ、しつけぇな。」

「? なにをどうして。」

「今の今まで戦ってましたよね?」

「宿儺と戦わせる。それが望みらしい。」

「「は!?」」

「別にいいよな。」

「よくねぇ!!」

「先輩の命令に、後輩は絶対服従だろ。こっちには宿儺のお気に入りがいんだから、方法はいくらでもある。スズ頼むな。」

「へ?わ、私ですか!?」

「よろしく〜あと俺ちょっと行くとこあるから。オマエらここで待っとけ。」


軽い調子ですごいことを次々に言い放ち、秤は何の手当てもしないままどこかへ行ってしまった。



- 274 -

*前次#


ページ:

第0章 目次へ

第1章 目次へ

第2章 目次へ

第3章 目次へ

第4章 目次へ

第5章 目次へ

第6章 目次へ

章選択画面へ

home