30分も経たないうちに、フロントは見事なまでに原型を失った。
襲いかかって来た軍人達も、フロアのあちこちで手足を拘束されたまま転がっている。
その中の1人を起こし、5人は話を聞くことにした。
「詳しくは知らねぇよ。俺は末端も末端だからな。オマエらが使う呪力とやらを、代替エネルギーとして研究することになったらしい」
「(日本人だぞ)」
「(現地ガイドですよ。要は裏切り者です)」
「この…っ!!"売国奴"!!」
「売国奴って言ってみたかったんですね、黙ってて下さい」
「将来的に自国民が個人でエネルギーを自給自足するための研究か…」
「フーム?」
「その研究が本当に進んでるんだとしたら、悟先生とか憂太先輩なんて真っ先に狙われるじゃん」
「確かに特級クラスの術師は確実に欲しいでしょうね。むしろ今まで日本でそういう話が出なかったのが不思議です」
「この国のトップはあくまで呪術総監部だ。プライドの高い奴らが自ら音頭を取って呪力を普及しようなんて、まず有り得ない」
「ノブレスオブリージュ…自己責任論の強いこの国で根付くことはないだろうな」
「…さっきのスズの言葉を借りれば、羂索は新エネルギーを餌にして非術師の軍隊を結界に招き、呪霊に贄として捧げるつもりか」
そしてそれによって起こる死に際の呪力の発露を利用して、結界内を呪力で満たす。
全ては人間と天元の同化に向けて行われることだった。
今の会話が正しいとすれば、全国各地で非術師が呪霊に襲われるという緊急事態が起きていることになる。
「助けよう」
「軍人達をか?でも俺達を拉致して体をイジくろうって連中だぜ?」
「だが放っておいたら"慣らし"が済んで、この国の人達が天元様と団子になるかもしれない」
「俺よく分かってないんだよなぁ」
「人命救助はもちろんだけど、相手の計画を潰すためにも動いた方が「ダメだ」
スズの言葉を遮った天使は、強い口調でそう言った。
今いる東京第1とパンダ達がいる第2は、日車や鹿紫雲の行動によりもう十分呪力で満たされている。
軍人を助ける助けないに関わらず結果は変わらないと、天使は言うのだ。
「私と華は共生関係だ。彼女のリスクは私のリスク。意味のない争いに彼女を巻き込むのはやめてくれ」
「もともと別に仲間でもなんでもねぇ。こっちは勝手にやらせてもらう。指図すんな。俺はオマエらを信用してない」
「?」「(悠仁、何か変…?)」
「さっきから天使と喋ってますか?それとも私?不愉快です」
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虎杖を先頭に、3人は薄暗い路地を走っていた。
黙々と足を動かす彼の背中を追いながら、スズと伏黒はチラッと視線を合わせる。
「悠仁、どうしたの?」
「…ん?何が?」
「らしくないんじゃないか」
「……そうかな」
「…言ってた内容は別に。"オマエら"っていうのも、天使と宿儺のことだろ?」
「私達も、それは分かってるんだけど…」
「いつもの虎杖なら、もう少し来栖に気を遣ったろ」
「スズや伏黒と合流して、来栖が……釘崎の代わりみたいになるのが、怖くなった」
「…バカ言うな」
「あの破天荒女子の代わりなんて、誰もできないよ」
「うん…後で謝る」
「そうしろ」「そうだね」
「何か言うことあるんじゃないですか?」
そう言って3人の目の前に降り立った来栖。
彼女との和解が成立すると、それから丸1日、スズ達は人命救助のため走り回るのだった。
to be continued...
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