迎えた16日の正午。
スズ達はとあるビルの屋上で、久しぶりに真希と合流した。
彼女の口から聞かされた結界外で起きた出来事に関する報告は、想像の遥か上をいく内容だった。
第100話 熟む
天元が羂索に獲られたこと、特級術師の九十九が命を懸けても羂索を止められなかったこと、そして…
未だ羂索が生き延びているという事実は、その場にいた全員に暗い影を落とした。
唯一良かったことと言えば、五条解放の糸口になる獄門彊「裏」が無事であることだけ。
これらの事実を淡々と話す真希は、後輩3人から見ても明らかに数日前とは様子が違っていた。
「(話してる内容の割には落ち着いてるな…)」
「(たった数日で変わったな、真希さん…何があったんだ…?)」
「(真希先輩の中から、真依さんの呪力を感じる…変わったのはそれが理由、なのかな…)」
三者三様で考えを巡らせていたが、今はそれどころではない。
すぐに頭を切り替え、今一度自分達がやらなければならないことを確認し合う。
こちら側が追加したいルールは4つ。その中の"点の受け渡し"は既にクリアしていた。
「問題は結界の人間と電波の出入りについてのルール追加だ。」
「何が問題なの?」
「いま泳者は結界を出入りすることができない。」
「私とスズさんはできますよ。」
「理由は違うんですけど。」
「……かなりなんでやねんなんだけど。」
「私の場合は天使の術式です。」
「スズの方は?」
「私はちょっといろいろあって、死滅回游の中では死んだことになってるんです。」
「は?…でも確かに、コガネの一覧にも出てこないな。死人だから結界とかそういうのが関係なくなったってことか。」
「はい。」
「ん−スズの理由はかなりイレギュラーだから無理だとして、天使の術式で他の人間を出入りさせることはできるか?」
真希からの問いかけに、結界の大元を消滅させられない以上それは厳しいと、天使は言葉を返す。
それに対しガッカリする様子も見せず、真希は改めて人と電波の出入りについて言及した。
死滅回游の総則にはそもそも出入りに関することは明記されていない。
よって現在の状況は結界のルールで発生しているということになる。
だから仮に追加しても結界のルールで弾かれる可能性がある。
ならば代替手段もあるそれは一旦後回しにして、4つ目の"泳者の死滅回游からの離脱"を進めようというわけだ。
乙骨から伏黒へ点が譲渡され、現時点で彼は300点以上を保有している。
「コガネ、総則追加だ。泳者の死滅回游からの離脱を可能にしてくれ。」
『却下されました。総則7に抵触します。』
「(ここまでは予想通り…)泳者は身代わりとして新規泳者を結界外から招くことで、死滅回游から離脱できる…ならどうだ?」
『…却下されました。』
「!」
「え、これでもダメなの!?」
「どうやったら死滅回游から離脱できんだよ!!」
予想外の展開に、スズと虎杖は揃って声を上げる。
2人の声に応えたのかどうかは不明だが、コガネは総則の代替案を提示してきた。
身代わりとして新規泳者を招く…そこまでは同じだが、さらに100点を消費するという条件が追加されている。
そっちの方が死滅回游の総則に抵触すると伏黒が訴えても、コガネは頑として条件を変えようとはしなかった。
結果コガネの提案を受け入れ、死滅回游に11個目の総則が追加された。
土台が整えば、あとは実行に移すのみ。
伏黒は早速、真希に姉を連れてくるよう依頼した。
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