時を同じくして、禪院家・忌庫奥にある訓練部屋には裏梅と羂索の姿があった。
部屋いっぱいに集められた呪力の溶液…
まるでプールのようなこの場が、"浴"が行われる場所であった。
そして何とも禍々しい色をした溶液の中から、呪いの王がザバッと立ち上がる。
裏梅から受け取った着物を身にまとい着流し姿になると、宿儺はコガネに伏黒津美紀の居場所を問いかけた。
表示された仙台へ向かおうとする彼に、羂索は意外そうな表情だ。
「ていうか戦るの?万と?わざわざ君から出向いて?」
「何かおかしいか?」
「いやてっきり放っておくのかと。昔から君達は万の一方的な片想いだろ」
「万はどうでもいい。用があるのは器の方だ」
「…ああ、成る程」
「伏黒津美紀を破壊し、俺の中の伏黒恵を完全に沈める」
「でもさ、万のことも放っておけないんじゃない?」
「?」
「スズだよ。君のスズへの想いを知ったら、万は発狂するよ?どこにいても必ず見つけて、確実に殺すと思うなー。ここに連れてくれば良かったのに」
「この光景を見せて、アイツに不快な思いをさせたくない」
「ふ〜ん。愛しちゃってるね〜でも心配じゃないの?こうしてる間にも万が動いてるかもしれないよ?」
「俺がいる限り、スズが危険な目に遭うことは万が一にもない。万だろうが、誰だろうが…スズには指一本触れさせない」
「(こりゃ相当惚れてるね…)じゃあ送ってあげるから、点ちょーだい」
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そうして仙台に到着した呪いの王。
呪力を追って辿り着いたのは、市内のとあるサッカー場であった。
「あら、そっちの子にしたのね」
「ああ。こっちの方が面が良かったものでな」
軽口をたたき合ったかと思えば、即座に戦闘モードに入る2人。
どこか楽しそうな万に対し、宿儺は面倒臭そうな態度が全面に出ていた。
「天使がいたでしょう。アイツ、あなたに気付いてなかったんじゃない?でも私は気付いたわ。なぜだと思う?」
「いちいち反応を求めるな。1人で喋るくせに」
「愛よ、愛。戒律とそれからくる憎悪では、愛を超えることはできない。ねぇ、宿儺。
あなたを殺すのは私でありたい。私を殺すのはあなたであってほしい。それでも私が勝った後生きていたら、あなたは私に何をくれる?」
「全て。ありえん話だが、負けたのならば死んだも同然。死体をどうしようと貴様の自由だ」
「じゃあね、じゃあね…けけけけけ結婚なんてことも…」
「勝手にしろ。ただし…」
「言質取ったり!!はい、縛り!!」
「中身はやらん」
「私が正妻!!妾なんて許さない…って、今何て言った?」
「中身はやらない、と言った」
「は?」
「体は好きにしろ。だが中身は別に行くところがある」
「言っている意味が分からないんだけど。私のところ以外に、どこに行く場所があるわけ?」
「それは言わん」
「……女?」
「さぁな」
「…あの女ね。天使と一緒にいた、確か…スズとかいう」
「だったらどうする」
「殺すに決まってるでしょう」
「ふっ。オマエがアイツと関わることはない。…俺がいる限りな」
そう言った王の目は、万が今までに見たことのないものだった。
女の勘は恐ろしいもの。
裏梅が危惧していた通り、万は一瞬にして宿儺のスズに対する想いの大きさを感じ取る。
宿儺が自分以外の、しかも女に想いを寄せているという事実は、万にとって決して受け入れられないことだ。
一層ボルテージが上がった彼女は、並々ならぬ想いを抱え、愛しの宿儺との戦いに臨もうとしていた。
to be continued...
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