"邪去悔の梯子"が直撃し、辺りはものすごい光と煙幕に包まれた。

光の方が落ち着くと、皆が一斉に獄門彊へ向かって走り出す。

まだ煙幕が立ち込めていて視界が悪いため、それぞれが五条に対して声をかけながら獄門彊を置いた場所に集合した。

だがそこに、当の本人の姿はなかった。


「…あれ?先生?獄門彊と一緒に消えたってこと?」

「(! 私のせい…?)」

「こうしてこの世界にまた1つ、新たなトリビアが生まれた…」

「……五条悟って魔の者だったんじゃないですか?」

「あ、開き直った」

「まあ五条の性格はそんなもんだよ」


冗談交じりでそんな会話をしていると、突然地面が大きく揺れ出した。

このタイミングの地震は偶然じゃないと皆がザワザワする中、家入はある人物の声が先程から聞こえないことに気がつく。

静かに辺りを見渡せば、その人物はまだ土嚢の影に座り込んでいた。


「スズ、どうした?大丈夫?」

「硝子さん…先生が…」

「それがさ、獄門彊と一緒に消えちゃって」

「消えてないです」

「え?」

「ちゃんと…戻って来てます…!」

「! 呪力感じるの?」

「はい…!先生が、戻って…来ました…」

「スズ!?」


極度の緊張と急な緩和で、フッと意識を手放したスズ。

咄嗟に支えた家入が状態を確認すれば、脈も呼吸も安定していて心配する要素はなかった。


「(よっぽど安心したんだな…)良かったね、スズ」


優しくスズの頭を撫でながら、家入は小さな声でそう呟く。

そんな彼女自身の表情も、いつになく穏やかなものだった。


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時を同じくして、日本海溝近くの廃墟のような場所に羂索の姿があった。

どこにどうやって獄門彊を置いてきたかを語る彼が見上げる先…

そこに、皆が待ち望んだ最強呪術師・五条悟が立っていた。

落ち着いた彼の表情を見る限り、焦りも動揺も心身耗弱も…何もない状態と言っていいだろう。

つまり封印される前と何ら変わらない五条がそこにはいた。

羂索に挨拶代わりの一発を喰らわせた後、五条は宿敵と相対する。


「しばらく見ないうちに変わったね、恵」

「クックッ。こっちの小僧になってしまったが…殺す」

「悠仁から逃げた奴が、尻捲ってみっともねぇなあ!!間抜け!!」

「貴様っ!!」


主を馬鹿にされ向かって来ようとした裏梅を、打撃1つで吹き飛ばす五条。

すぐにでも一戦を交えかねない状況だったが、それを止めるように羂索が割って入った。


「待て宿儺。彼と戦う前に私との約束を果たしてもらう」

「宿儺様とあろうお方が、そんなお母さんに縫ってもらった雑巾の指図を聞くんですか〜?」

「……いいだろう」

「…はぁ。ったく、いま何日だ?」

「11月19日」

「じゃあ12月24日でいいだろ」

「はっはっ。ロマンチシズム?24日イブに私達が予定を合わせるなんて気色悪いな」

「こっちだって惚れた女とイチャつきたかったよ。でも命日が2つもあったらややこしいだろ」

「…勝つ気かい?」

「はっ。……勝つさ」


そう告げた五条の顔は自信に満ち溢れ、口元には笑みが浮かんでいた。


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-side 五条-

"勝つ気か?"って聞かれた時、悠仁が高専に来た日に交わしたやり取りが脳内に再生された。


"先生とどっちが強い?"

"うーん、そうだね…力を全て取り戻した宿儺なら、ちょっとしんどいかな"

"負けちゃう?"

"勝つさ"


生徒に嘘はつけないからね。

有言実行のカッコいい先生だって見せてあげないと。

あの時、スズも不安そうな顔してたっけ…

俺がいなくなる未来を想像して怖がってたのに、封印される瞬間を目の前で見せた。

最後に一瞬だけ見えた、不安と恐怖でいっぱいの顔を今でもハッキリ覚えてる。

惚れた女にあんな顔させた自分が許せない。

"どこも行かない"っていう約束を簡単に破った自分にイライラする。

でもきっとスズは、そんなの気にしないって笑ってくれんだろうな。


…会いたい。

会って、抱き締めて、たくさん"好き"って言いたい。

俺の言動に赤くなって、恥ずかしそうに下向いちゃって、でも頑張って顔見てくれようとしてさ。

それで"おかえり"とか言われたら、俺どうなっちゃうんだろ。嬉し過ぎてぶっ倒れそう。


もう絶対スズを1人にしない。

スズに悲しい想いさせない。

だから…また俺の隣で笑ってて。



第6章 fin.



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