その日の夜…

女性陣が中心となって作った夕飯が提供されるのに合わせて、関係者達がゾロゾロと食堂へ集まって来る。

五条の復帰祝いも兼ねたご飯会は盛り上がり、一時皆の頭からツラい現状を忘れさせた。

2時間程続いた会がお開きになると、片づけは当番制にしようとスズが提案する。

まず今日は自分が担当するので、明日以降は順番にしていこうと。

当然ながら反対する者はおらず、この提案は無事に可決された。


「スズ、本当に1人で平気?俺、手伝うよ?」

「ありがとう、悠仁!量は多いけど単純作業だから大丈夫だよ。それに今日手伝ってもらったら、悠仁が当番の時に私もやらなきゃいけなくなっちゃうから」

「あははっ!確かにそれもそうか。じゃあ今日は任せた!」

「うん!ゆっくり体休めてね」

「ありがと。スズもね」


1人、また1人と食堂を出て行くメンバーに声をかけながら、スズは洗い物を進めた。

と、不意に目の前に大きな影ができ、驚いた彼女はパッと顔を上げる。

そこにはイスに座り、洗い場の前にあるカウンターに頬杖をついて笑顔を見せる五条がいた。


「あれ?先生、悠仁達とお風呂行ったんじゃなかったんですか?」

「うん、声かけられたけど後でいいかなって。それより…スズと2人になりたかった」

「そ、そう、でしたか…!」


直球な言葉に照れて下を向いたスズは、恥ずかしさを隠すように黙々と手を動かす。

そんな想い人を愛おしそうに眺めていた五条だったが、それだけでは我慢できないとばかりに行動を起こす。


「俺も手伝う」

「いえ、平気です!先生病み上がりみたいなものなんですから、安静にしてて下さい」

「こんぐらい余裕だって。俺を誰だと思ってんの?」

「ダメったらダメです!いくら最強でも、あんなとこに長い間閉じ込められてたら少しぐらいおかしくなります。今日はゆっくりしてなきゃダメ」

「……分かった」

「よし!じゃあ早く部屋帰って寝てくださいね」


もっと近くに行きたいと思っての計画がダメになり、分かりやすく拗ねる五条。

一回り上とは思えない可愛らしい表情に、スズは思わず笑みが漏れる。

だが安心したのも束の間、目の前の大人はなかなかその場を離れようとしなかった。


「ほら、先生〜早くお部屋帰ってくださ〜い」

「やだ。まだスズといる」

「私もう少しかかりそうですから、遅くなっちゃいますよ?」

「いい、大丈夫」


こういうモードになるとスズの言うことでさえ聞かなくなるのが五条という男。

それを昔からの付き合いでよく知っている身としては、もう放っておくしかないと腹を決めた。


「(座ってるだけなら体も疲れないし、良しとするか!)」

「あっ。スズ、袖下がってきてる」

「おっと…!」

「待って、俺が上げてあげる。手拭くの面倒だろ」

「ありがとうございます!すみません」


サッと立ち上がって洗い場の方へ来た五条はスズの背後に回り、バックハグのような形で彼女の袖に手を伸ばす。

そう来ると思っていなかったスズは、途端に自分の心臓がうるさくなるのを感じた。

両腕の袖を上げてもらい、ドキドキしながらもお礼を伝えようとしたスズを、五条はそのままギュッと抱き締めた。


「悟先生…?」

「…スズさ、今日どこで寝んの?」

「え、あ、普通に寮の、部屋…です」

「俺が戻って来たのに?」

「え?」

「……俺んち来てよ。1人で帰んのやだ」


3週間近くあの狭い空間に閉じ込められていたのだ。

夜1人になるのが嫌だと言う気持ちはスズにも理解できた。

自分がいることで、少しでもこの最強呪術師の心が安らぐのなら…

その想いから申し出を快諾すれば、五条はとても嬉しそうに"ありがと"と言って笑った。



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