「皆様〜!ちょっとよろしいですか!」

「聞いてー!」

「スズも悠仁も朝から元気だな〜」

「だな」「しゃけ」「本当にね〜」

「オマエら1個しか変わんねぇだろ」


朝の食堂。

まだ全体的にふわ〜っとした空気の中、1年コンビは元気に言葉を発した。


「今日の夜、ここでパーティーをします!」

「だから皆、19時に集合な!」


満面の笑みでそう告げたスズと虎杖に対し、他の面々はポカンとする。

何のパーティーなのかと聞かれれば、2人はとびきりの笑顔で答えを返した。


「「今日は…」」





第108話 12月7日





29年前の今日、現代最強呪術師がこの世に爆誕した。

そう、12月7日は五条悟の誕生日である。

前日の夜、スズと虎杖はこっそりと話し合いをしたのだ。

こんな時に誕生日会なんて…という意見もあるだろうが、こういう時だからこそ生まれた日を祝っても良いのではないか。

そしてどうせやるなら皆にも祝ってもらった方が五条も嬉しいに違いないということで、冒頭の発言に至る。

と言っても派手な装飾やプレゼントは準備できないので、いつもの食事をただ皆でワイワイ食べるだけなのだが…


「アイツにとってはそれで十分だよ。同期の私からも礼を言う。企画してくれてありがと」

「五条さんこういうの好きそうだもんな〜」

「一応サプライズなので、先生には内緒でお願いします!」

「スズ!伊地知さんから連絡来た。もう引き留めるの限界だって」

「ヤバっ!じゃあ皆さん、また19時に!」


五条が食堂に来ないよう、スズ達は伊地知にお願いして足止めをしてもらっていた。

しかし特に理由もないのに、長い時間彼の気を逸らし続けることは至難の業だったようで…

あの伊地知をもってしても、そろそろ限界とのこと。


「もう〜朝から何なのさ〜」

「すみません、五条さん。ちょっといろいろ確認したいことがあって…」

「どれもこれもそんな急ぎの内容じゃないじゃん。…何か怪しい」

「えっ!?(木下さん、助けて…!)」

「さ、悟先生!おはようございます!」

「おっ。スズ、おはよ〜早いね」

「何か目覚めちゃって!」


伊地知からのアイコンタクトを受け、急いで五条の元に馳せ参じたスズ。

朝から想い人に会えたことで、彼の機嫌はV字回復。

ニコニコしている29歳児の背中を押しながら、スズは伊地知に深く頭を下げた。


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その日の夜。

気づけば、約束の時間である19時まであと10分程だった。

特別なことはできないけれど、いつもより料理の品数を増やしたり、皆にクラッカーを持ってもらったり、少しだけど装飾をしてみたり…

幹事2人は出来る限りのことをやって本番に臨んだ。

そしていよいよ主役の登場である。


「(あーお腹空いたー)」

「「先生、誕生日おめでとうー!!」」

「……えっ?」


スズと虎杖の声に合わせて、皆が一斉にクラッカーを鳴らした。

唖然として立っている五条の頭に虎杖がパーティー用の三角帽子をかぶせ、スズが"本日の主役"たすきをかける。

そして改めて五条の顔を見つめた2人は、もう一度明るい笑顔で"おめでとう"と伝えた。


「あれ、今日って…」

「12月7日です。悟先生が生まれた日ですよ!」

「だと思ってたけど、やっぱり忘れてたか〜。でもスーパーサプライズになったね!」

「うん!大成功だね!」

「ははっ!全然接点ない人も祝ってくれてんの?」

「大勢でワイワイやった方が、先生喜ぶかなって!」

「悟先生、楽しいの好きでしょ?」

「そうだね。すごく好き。ありがとう!こんなたくさんの人に祝ってもらえて、僕は幸せ者だね!」


キラキラした笑顔を見せる五条は、学生時代に戻ったかのように輝いていた。

主役席に案内され、自分の好物ばかりが並ぶテーブルを前にすると、その輝きはさらに増した。

そこから先はもうお祝いというよりは、ただの宴会状態。

お酒を飲む者、ひたすらご飯を食べ続ける者、この機会に最強呪術師と会話をしようとする者など様々だ。

その瞬間瞬間を、スズはスマホで撮影して思い出として残していく。

今の過酷な状況が全部嘘かと思うほど、写真の中は笑顔で溢れていた。



2時間が経過した頃には、日々の疲れもあり、皆ようやく落ち着いてきた。

さっきまで人に囲まれていた五条の周りも、今はスズと虎杖だけだ。


「先生、あのさ…」

「ん?」

「プレゼントのことなんだけど…」

「あの…やっぱりお店とか開いてないところが多くて…用意できなかったんです。ごめんなさい」

「ごめん」

「! ……2人とも、ちょっと立って」

「「へ?」」

「いいから。で、こっち来て」


訳が分からずイスから立ち上がったスズと虎杖は、五条の前に並んで立った。

と、不意に立ち上がった彼は、そんな2人をギュっと抱き締める。

戸惑う生徒達を他所に、担任の先生は穏やかな声で話し始めた。


「僕が、今どれだけ嬉しいか分かる?教え子が自分のために誕生日会を計画してくれて、忙しいのに料理とか飾りとか準備してくれてさ。

 おまけにこんなにたくさんの人集めて、盛大に祝ってくれた。ここまでしてくれた2人が謝るなんておかしい」

「「先生…」」

「綺麗事でもなんでもなくて、今目の前に広がってるこの景色が何よりのプレゼントだよ」

「へへっ。そっか!」「良かったです…!」

「ありがとうスズ、悠仁。最高の誕生日だった。来年の幹事は恵と野薔薇にやってもらわないとね!」

「それいいね!」「絶対そうしましょ!」


来年の今日を想像して、3人は顔を見合わせて笑った。

5人で笑い合える日が1日でも早く来ることを祈って…



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