翌12月24日。

日本の…いや、世界の行く末を決める世紀の大一番が行われる日だ。

何の前触れもなく目覚めたスズは、自分の体に回されている逞しい腕の強さを感じながら師匠の顔を見上げる。

そこには子供のように安心しきった寝顔をこちらに向ける五条がいた。

数時間後に両面宿儺と戦うことなんて、すっかり忘れているかのようだ。

思わず、その頬に手が伸びる。


「絶対、無事に戻ってきてね…」

「約束する」

「! 起きてたんですか…」

「ちょっと前にね。スズがあんまり優しい顔でこっち見てるから、目開けんのもったいなくて」

「な、何言ってるんですか…!」

「でもやっぱりスズがいると熟睡できる」

「それなら、良かったです…!」

「その表情も、朝から独り占めできてすっごい幸せ」

「ちょっ、あんま、見ないでください!」

「ふっ。じゃあ起きますか。おはよ、スズ」

「おはようございます、悟先生!」


笑顔で朝の挨拶を交わすと、2人は揃って支度を始める。

この後のことを考えて、朝食は部屋で軽めに済ませた。

それからピタッとした黒いTシャツと、カンフーを思わせるダボっとした白いボトムスへと着替える五条。

いつもとは違う彼の姿に、スズはつい釘付けになってしまう。


「そんなに見られたら照れちゃうんだけど」

「あ、ごめんなさい!」

「いいよ、スズなら。どう?カッコいい?」

「とっても」

「ありがと。スズのお陰で心も体も絶好調だし、あとは開始を待つだけだね」

「この後、歌姫先生達と打ち合わせがあるんですよね?」

「そっ。だからスズは皆と一緒にちょっと待ってて」

「はい!じゃあ先に出ますね」

「うん、また後でね」


一足先に五条家を出たスズは、高専で虎杖達と合流する。

歴代の教え子達が顔を揃えて話題に上がるのは、当然の如く、この後大一番を迎える担任の先生のことだった。


「"頑張れ"?」

「"死ぬな"?」

「なんかしっくり来ないんだよな」

「今まで勝って当たり前の人間だったからな」

「心配しようとか応援しようという気が湧かないよね」

「こんぶ」

「はは。でも普通に喜んでくれると思うよ」

「"あたりめーだろ"とか返されたら、宿儺の前に殴っちまいそうだ」


五条にかける言葉を議論する先輩組を他所に、直近の教え子であるスズと虎杖はその光景を静かに眺めていた。

と、そこへ打ち合わせを終えた五条・楽巌寺・歌姫が階段を降りてくる。

羽織をまとい厳しい表情の五条は、彼が御三家の当主であることを皆に思い出させるに足る風格であった。

一気に空気がピリつく中、その静寂を破ったのは虎杖だった。


「先生!!術式邪魔!!」

「「「!」」」

「(ふふっ。悠仁らしい!)」

「ははっ。ばっちこい!!」


虎杖の意図を察した五条は、笑顔で羽織を脱ぎ去るとこちらに背を向ける。

勢いよくベシッと叩く虎杖に続き、歴代の教え子達が次々に彼の背中を叩いて行く。


「行ってこい、バカ目隠し!!」

ツラだけの男じゃねぇって証明しろ!!」

「しゃけ!!」

「しんどくなったら代わりますよ」

「勝てよ!!五条さん!!」

「応!!」

「…スズも行ってやって」


見守っていた大人組の家入から、声をかけられるスズ。

元気よく頷いた彼女は五条の元へと駆け寄り、背中を叩く代わりにギュッと抱きついた。


「! スズ?」

「…朝の約束、忘れないでくださいね」

「もちろん。誕生日の時みたいにさ、ご飯作って待っててよ」

「はい!先生の好きなもの、たくさん準備しておきます」

「で、夜は俺の部屋集合ね」

「えっ…!」

「たくさんスズに甘えたい」

「ぜ、善処します」

「ふふっ。楽しみにしてる」

「…また向こうで、見守ってますから」

「うん。何も心配しないで、俺のことだけ見てて」


振り返ってスズの頭を撫でながら、五条は笑顔でそう告げた。

いよいよ、最強対最強の戦いが始まる…!



to be continued...



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