気づいた時、スズは五条の腕の中にいた。
見上げた先にいる師匠は、少しのイライラを含んだ挑発的な表情を宿儺に向けている。
伝わってくる呪力も、いつもと違いピリピリしていた。
「勘違いしてるみたいだから言っとくけど、スズはオマエ側の人間じゃないよ。挑戦者のくせに、僕の大事な子に手出すなよ」
「クソガキが」
突如手元から愛しの彼女を奪われ、宿儺もまた一気に機嫌が悪くなる。
しかしそんな王を無視して、五条はスズへと視線を向ける。
その表情は、さっきまでの人物と同じとは思えないほど穏やかで優しいものだった。
「大丈夫だった?」
「は、はい!ありがとうございました…!」
「…」
「先生?」
「まだ少し顔赤いね。……宿儺の方にいたかった?」
「! そんなわけ…!」
どこか寂しそうな顔でそう問いかけてくる五条に、スズは慌てたように言葉を発する。
が、それを遮るように五条は今一度強く彼女を抱き締めた。
「ごめん、嘘。いじわる言った」
「うぅ…」
「だってさ…スズが宿儺のことで赤くなってんの嫌だったんだもん」
「それは、宿儺が…いろいろ言って、きたから…!」
「…じゃあ俺の方が好き?」
「当たり前じゃないですか!!」
「ふふっ。…もっかい言って?」
「え?」
「俺と宿儺、どっちが好き?」
「い、今言ったじゃないですか!」
「ダメ。どっちが好きか、スズの口から聞きたい」
「…悟先生の方が、好きに…決まってるでしょ!」
「俺もスズが好き」
愛おしそうに見つめながら、五条はそう告げる。
またしても間近で直球の言葉を向けられ、スズの顔は再び赤く染まった。
想い人の愛らしい変化に満足気な五条は、もう一度彼女を優しく抱き寄せた。
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スズの体温・匂い・感触を十分に味わうと、五条はようやく体を離した。
恥ずかしがりながらも、いつもの明るい笑顔を向けてくるスズに同じ表情を返す五条。
そんな彼の口から、"そろそろ行こっかな"と軽めの言葉が発せられた。
羽織っていた上着を脱ぎ捨て、合わせてストールも外す。
だがストールはその場に捨てず、自分の方を緊張の面持ちで見つめる想い人の首にふわっとかけた。
「外寒いから、これ巻いときな?」
「ありがとうございます!ふふっ」
「ん?どうしたの?」
「これ悟先生の匂いがするから…!何か落ち着きます」
「! …そういうことは今日の夜、俺と2人の時に言って?」
「へ?」
「まぁ…言った後の身の安全は、保障してあげられないけどね」
冗談っぽくそう言う五条に、スズは"こんな時に…!"と赤い顔で怒ってみせる。
いつもと変わらない反応を返してくる想い人の姿は、五条にとって何よりもかけがえのないもので…
自分の帰る場所はここなのだと、改めてスズへの想いを強くする。
赤い顔のまま自分に対しお説教をしてくる彼女の頬を、五条は両手で優しく包み込む。
不意の出来事に言葉が止まり、目を見開いて見つめてくるスズに、彼は微笑みながら強い言葉を送った。
「必ず帰ってくるから」
「! …当然です!帰ってこなかったら怒りますからね…!」
「ふふっ。うん!」
「いってらっしゃい、悟先生!」
「いってきます」
満面の笑みを向けるスズの鼻に、優しくキスを落とす五条。
アワアワする想い人の頭をポンと撫で、彼は両面宿儺と向かい合った。
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「聞き間違いでなければ、さっき挑戦者と言ったか?」
「言ったよ」
「不意打ちを当てたことが余程嬉しいようだな。五条悟、貴様は俎板の上の魚だ。
多少他より活きが良く、名前がついていないだけの魚。まずはその鱗から剥いでやる」
「じゃあなんでその面のままなんだよ。僕に手加減してほしかったんだろ?残念ながら僕は特殊な訓練を受けててね。
恵なら本気で殴れる。悠仁で1回死んだのはまずったな。僕は思ってるよ。恵のことは、オマエを殺してから考えればいい」
会話をしながら、それぞれが体中に呪力を巡らせる。
そして五条の言葉が終わった瞬間、ついに戦いのゴングが鳴った。
to be continued...
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