ついに始まった最強同士の戦い。
打撃も蹴りもその1つ1つが重く、繰り出す度に辺りに大きな呪力が流れ出る。
ビリビリと伝わってくる最強の力を肌に感じながら、スズは2人の一挙手一投足を見守るのだった。
第112話 人外魔境新宿決戦B
宿儺が橋を破壊し足場を崩せば、五条がその瓦礫を操って攻撃を仕掛ける。
かと思えば、両者は一瞬にして場所を移し、気づいた時にはスズの視界から消えていた。
呪力と爆音を頼りに追った先にあったのは、跡形もなく崩れ去った高層ビルだった。
舞い上がる土埃にむせながら呆然と立ち尽くしていたスズの背後から、ザッザッという足音が聞こえてくる。
「全部オマエが壊したことにするからな」
「…どの口で?」
「先生!宿儺!」
「大丈夫、スズ?瓦礫当たってない?」
「はい、平気です!」
「良かった。宿儺がめちゃくちゃに壊したから、当たってたらどうしようかと思って」
「それはこっちの台詞だ。オマエの雑な攻撃でスズが傷ついたら許さんからな」
お互いの言葉にイライラし、スズの頭上で改めて火花を散らす最強コンビ。
そんな2人に"私のことは放っておいていいです…!"と訴えるも、彼らは全く聞く耳を持たない。
目の前の喧嘩を止めるべきか、それともこの場を離れ避難すべきか…とオロオロするスズを他所に、2人の低レベルな口喧嘩は止まらなかった。
だがそれもついに終わりを告げる。
「いい加減にしろ。貴様とこんな言い合いをしている時間はない。さっさとケリをつける」
「初めて意見が合ったよ。僕も早く終わらせたいんだ…待たせてる子がいるからね」
そう言いながらスズに微笑みかける五条と、その様子を苛立たしそうに見つめる宿儺。
両者が次なる一手のために掌印を結ぶ。
そしてついに…
「「領域展開」」
静かに発した言葉を機に、呪術戦の頂点と言われる戦いが幕を開けた。
逃げる間もなく2人の領域内に巻き込まれたスズは、一気に体に力が入る。
五条の領域に対する安全性は担保が取れている。
問題なのはもう1つの領域の方だが…
「案ずるな、スズ」
「!」
「以前と同様、オマエは攻撃対象から外してる。だから何も気にせずそこにいろ」
「ありが…っ!」
「ふっ。今の顔は、嫌いな男相手に向けるものではないな」
思わず笑顔でお礼を言いかけたスズに、四阿の上に立つ宿儺は楽しそうに話しかけた。
が、すぐにその表情を戻すと、不敵な笑みと共に五条を見下ろす。
五条の結界内では、対になる2人の必中命令が重複し打ち消しあっていた。
互いに領域を展開しながらの戦闘…ダメージを受け自身の領域が崩壊すると同時に、相手の術式が襲いかかる。
まさに究極の緊張状態である。
領域内にも関わらず何も起こらないという不思議な現象を目の当たりにしていたスズは、不意に嫌な音を捉えた。
ギャリギャリと何かが削れるような音が大きくなるのに合わせて、彼女の心臓も拍動を増す。
「(確か宿儺の領域は結界を閉じなかったはず…てことは、この先生の結界の外にも領域が展開されてる…まさか!)」
スズがバッと上を見た瞬間、五条の結界に亀裂が入った。
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