領域の結界は外側からの攻撃に弱い。

故に亀裂が入った結界はいとも簡単に破壊され、派手に割れたガラスのように、頭上からは結界の破片が降り注いだ。

均衡が崩れたということは、相手の術式をモロに受けるということ…

振り返った先で、五条が首に斬撃を受けていた。

すぐに反転術式で治すも、領域が展開されている限り斬撃は続く。

見る間に血まみれになる師匠の姿に、スズは体の震えが止まらなかった。


「悟先生!!」

「(ああ…良かったよ…術式の性能では、僕の方が圧倒的に上だ。スズ、不安にさせてゴメン。大丈夫だからね)」


チラッと想い人の方へ視線を向けた五条は、一旦態勢を立て直すため姿を消した。

それを宿儺が見逃すわけもなく、2人は再び肉弾戦に入る。

しかし先程と違うのは、五条は常に斬撃で受ける傷を治しながらの戦闘だということ。

おまけに相手が呪いの王とくれば、常人には到底できない芸当だった。

その後も簡易領域を使い、傷を治しながら戦っていた五条だったが、突然それを一切やめてしまう。

結果、彼の体は傷だらけで血まみれになるのだが…次の瞬間!

五条は目にも止まらぬ速さで宿儺にしがみつく。

驚く王の腰に足を回したまま、彼は至近距離から"赫"を放った。


「(えっ、何で今"赫"が打てるの?術式は焼き切れてるはずじゃ…)」


領域展開後、一時的に術式は焼き切れ使用不可能になる。

だが今目の前には、あまりに短時間で再び術式を使用している師匠がいた。

どういう理屈か分からないながらも、スズの脳内には少し前に五条と交わした会話が浮かんでいた。


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それはスズが初めて負の領域展開を会得した八十八橋の案件の後…

五条の部屋で2人きりの時間を過ごしていた時だ。

会話がひと段落し、五条が会えなかった分を補うようにスズをさらに強く抱き寄せる。


「先生、今話しかけてもいいですか?」

「いいよ。いちいち聞かなくてもいいのに」

「いや、何か体温高いし、声も落ち着いてるから眠いのかな〜って」

「落ち着いてる?スズといるといつもこんな声だと思うけど」

「そう、でしたっけ」

「うん。それと…体温高いのはスズの方だよ?」

「えっ!私ですか?」

「だって俺眠くないもん。スズが、俺のこと意識してくれて体温が上がったのかなって思ってたんだけど…違う?」

「そ、そっか…!」

「ふふっ。で、聞きたいことって何?」


より一層体温が上がったスズを可愛く思いながら、五条はそう問いかける。

一連のやり取りでドキドキしてすっかり忘れていたスズは、慌てたように話を始めた。


「あの、領域展開の後って術式が使えなくなるじゃないですか」

「うん」

「それって先生も同じですか?」

「あははっ!もちろん。俺なら違うと思ったの?」

「だって最強だから、特例だったりするのかなって…!」

「残念ながら、そこは皆と一緒だよ」

「じゃあ、もしそういう場面が来たらどうします?」

「ん〜今まで出くわしたことないからな〜」

「…負けちゃう?」

「! 負けないよ。スズがいてくれれば、俺は絶対負けない」

「うん…!」

「今パッと思いついたのは…焼き切れた術式を治す方法かな」

「えっ!そんなことできるんですか!?」

「ちょっと体に負担はかかるけどね。だからやり方は秘密〜」


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あの時言っていたことが、現実に起こってしまった。

そして五条は今間違いなく、焼き切れた術式を治したのだ。

体のどこかに負担をかけて…


「あーしんど」

「(あの時もっと詳しく聞いておけば良かった…先生、大丈夫なんだよね…?)」


笑いながら体の傷を反転術式で治す五条を、スズは不安そうに見つめるのだった。



to be continued...



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