またしても同時に発動した両者の領域展開。
中の様子は分からないが、呪力の動きから激しい殴り合いをしていることは容易に想像できる。
そして3分後…
先程と同様に五条の領域が破壊され、顔面から血を流す宿儺が姿を見せる。
それはつまり、領域内での戦闘は五条が優勢であることを示していた。
ダメ押しで王を殴り飛ばして距離を取ると、スズの心配を他所に5回目の領域展開を発動する五条。
当然宿儺も発動したのだが、今回は肉体の治癒に気を取られ発動がワンテンポ遅くなる。
結果、5回目にして初めて宿儺は"無量空処"をモロにくらった。
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五条の領域展開がほんの僅かだが先に発動したことは、スズも傍で見て気づいていた。
恐らく領域内では、師匠が今まで以上に有利な状態で戦っている。
"これで決まって欲しい"と祈るように見守る中、何故か五条の領域は再び破壊された。
驚いて目を向けた先に、渋谷の地で見たあの式神が立っていた。
「魔虚羅…!」
あの日の恐怖が体の奥底から呼び起こされ、体が震えるスズ。
思わず後ずさりした彼女の方へ、魔虚羅がゆっくりと視線らしきものを向ける。
「ひっ…!」
「魔虚羅。スズに手を出すことはもちろん、近づくことすら許さん。良いな?」
『…』
「大丈夫だ、スズ。あの日のようにはならん」
「うん…」
「不安ならまた抱き締めてやるから、いつでも呼べ」
「ありがとう…!」
「(ふっ。俺を憎く思う感情がすぐにブレるな)」
自分に対し安心したように少し笑みを見せるスズを、王もまた穏やかに見つめる。
そんな様子を珍しく黙って見守っていた五条は、イライラしながらも今起きたことの解明に頭をフル回転させていた。
脳内で考えるのは、何故目の前の式神が平然と動いているのかということ。
あらゆる攻撃へ適応する能力を持っているとはいえ、いくら何でも"無量空処"への適応が早過ぎる。
「(さっきの0.01秒で"無量空処"への適応を!?あり得ない!!法陣の回転どころか、魔虚羅が顕現したのはその後だ!!
宿儺が適応を肩代わりした…?いや、適応を肩代わりしていたのは…)恵の魂か!!」
「何か言いたいことがありそうな顔だな」
「別に。思ったより必死こいてくれてるみたいで嬉しいよ」
「クハッ。貴様程じゃないさ」
厄介だと思っていた"無量空処"を、五条の手札から消しておきたかった宿儺。
その方法を得意げに話す彼に対し、当の五条はさして焦った様子を見せない。
宿儺自身が適応したわけではないため、もう一度領域を展開すればまた魔虚羅を出さざるをえないと…
「次は一撃で消してやるよ」
「クックック…貴様はもう領域を展開できない」
宿儺が薄ら笑いを見せた直後、五条の動きがピタッと止まる。
と同時に、彼の鼻からは先程のとは比べ物にならない量の血が流れ出た。
涼しげだった五条の顔には大量の冷や汗が浮かび、膝をついたまま荒い息づかいを繰り返す。
普段は全く見せないツラそうな姿に、スズは本能的に危険を感じ駆け寄った。
「悟先生…!」
「スズ…」
「反転術式による、焼き切れた生得術式の修復とは…かなりの無理をしたじゃあないか。
術式の刻まれている脳…大体、右脳の前頭前野といったところかな。
一度自らの呪力で脳を破壊してから、反転術式で治癒することで焼き切れた術式をリセットしていたな」
「(やっぱり脳だった…しかもそんな危険なことを5回も…)」
「肉や骨を治すのとはわけが違う。限界だろう?仮に領域を展開できたとしても、その時点で死ぬか、俺に対抗できるほどの精度は出せないさ」
「(宿儺が言うように、先生の体は限界が近い。私から先生を気遣う言葉が出た瞬間に宿儺は勝ちを確信する…落ち着いて、私…!)」
「(目の前に宿儺がいなければ、"大丈夫ですか…?"とか"もうやめてください!"とかきっと言いたいよね…内緒で危ないことしまくったし。
でも今それを必死に我慢してくれてるのは、宿儺を精神的に有利にさせないため。俺の立ち位置を下にしないため。あーもう、本当に)…いい女」
「ん?先生?」
呟いた声が聞こえず、顔を覗き込んでくるスズ。
そんな彼女が太ももに添えてくれている手に自分の手を重ね、五条は優しく微笑みかけた。
宿儺の攻撃は万が一にもスズには当たらないが、それでも少しだけ彼女を後ろに下がらせる。
「次、俺は領域を結界で閉じる。逃げ道はない。あとは貴様を切り刻みながら、その無限にも適応させてもらう。
安心しろ、スズには一切の傷を負わせないと約束する。じゃあな最強。俺がいない時代に生まれただけの凡夫。領域展開…」
そう唱えた直後、宿儺の領域はもの凄い音と共に崩れ去る。
スズを含め皆が驚きを見せる中、王の目と鼻からはボタボタと血が流れ出た。
「無量空処の影響が…!」
「はっはっはっ!しっかり効いてるじゃねえか!!生徒が見てるんでね。まだまだカッコつけさせてもらうよ。それに…」
「?」
「惚れた女と約束してんの…カッコいいとこ見せるって。ねっ?」
不安そうな表情を出さないように頑張っているスズを抱き寄せると、五条はニヤリと笑いかけながら目線を合わせた。
そのいつも通りの表情は、スズを安心させるには十分過ぎるほどで…!
明るい笑顔で頷きを返す想い人にもう一度笑みを向けてから、五条は再び立ち上がった。
to be continued...
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