スズに微笑みかけてから立ち上がった五条は、右の拳に呪力を込める。

そして自身の術式を応用した強烈な打撃が王の左頬にめり込んだ。

五条悟 対 両面宿儺 第2ラウンド開始。





第114話 人外魔境新宿決戦➄





よろけた宿儺の胸倉を掴むと、彼を引きずりながらもの凄いスピードで走り出す五条。

その勢いで王を放り投げ、間髪入れず次の攻撃を繰り出していった。

師匠が一瞬で自分の前から消えたことに、スズはしばし呆然とする。

慌てて後を追えば、2人は都庁前で向かい合っていた。

信号機の上にいる五条を見上げていたスズの視界の端で、宿儺の頭上に浮かぶ法陣が回った。


「(嘘、法陣が…!まさか、もう先生の不可侵に適応したの?)」

「まだだよ、スズ。大丈夫」


心の声に答えるように、五条はそう言って少しスズへと視線を送る。

彼女が不意に与えられた返事に驚いている間に、五条を乗せた信号機は青に変わった。

その瞬間向かい合っていた両者は同時に動き出し、宿儺はすっかり戦いの道具と化した信号機を投げつける。

が、それは五条の眼前でピタッと動きを止めた。


「(先生の言う通り、まだ不可侵は有効なんだ…!)」

「気づいてるか?」

「トータル4回だろ。あと3回…魔虚羅が僕の不可侵に適応するまでの法陣の回転数」

「(あとたった3回!?)」

「クックック。カウントダウンだな、オマエのその薄ら笑いが消えるまでの」

「薄ら笑いはお互い様。3カウントなんて待たずにぶっ殺してやるよ」


あと3回法陣が回れば、また1つ自分の技が奪われる。

この頂上決戦において、それがどれほど恐ろしく不利に働くか…

スズも表情にこそ出さないが、内心はドキドキと不安でいっぱいであった。

だが当の本人はと言えば、そんなことは微塵も感じていないのか、顔には笑みさえ浮かんでいる。

周りばかりが焦りの表情を見せる中、法陣が2回目の回転を終えた。

都庁を使って再び戦い始める2人を追いかけてスズもまた走り出したのが、突然それを止める声が聞こえてくる。


『バカ!スズ、待て!!』

「カグツチ!?急に出て来ないでよ、ビックリするじゃん!」

『オマエが危ねぇことしようとすっからだろ!』

「危ないこと?」


突然出てきた式神・カグツチの発言に、スズは頭に?マークを浮かべる。

最強同士の戦いを近くで見守るのは当初から決まっていたし、今のところ戦いに巻き込まれるような行動もしていないつもりだ。

それとも何か邪魔になってしまうようなことをしたのか?

スズがそう考えを巡らせていると、カグツチが珍しく真面目な表情で言葉を紡ぐ。


『元々俺はスズがこの現場に出ることに反対だった。いくら攻撃が当たらねぇって言っても危な過ぎんだろ。

 それでも今まで黙認してたのは、フィールドが新宿全体だったからだ』

「新宿全体…」

『そうだ。新宿を広く使ってるうちはアイツらもスズを避けた攻撃をしやすいし、オマエ自身も逃げ場が山ほどある。

 でも屋内はそうはいかない。狭い場所での戦闘は軽い攻撃でも周りに被害が出やすいし、死角も多くなる』

「確かに…そうだね」

『逃げ場も極端に減るから、万が一のことがないとはいえねぇだろ?だから屋内に行くのはダメだ』

「…分かった。先生の邪魔になりたくないし、中には入らないようにする!」

『俺は…!スズのこと守りたいから言ってんだよ!悟のことばっか気にしてオマエがケガすんの…すげー嫌だ』

「カグツチ…」


さっきまでのしっかりした雰囲気が嘘みたいに、不貞腐れたような表情を見せるカグツチ。

親を心配する子供のようなその姿に、スズは優しく微笑みかけながら相棒である式神にギュッと抱きついた。

突然のことに驚くカグツチだったが、すぐに両腕を彼女の背中に回す。


『…もっと自分のこと大事にしろよ、バカあるじ

「ごめん。心配かけてばっかりだね…」

『心配なんかいくらかけてもいい。俺が絶対守るから。…大好きなんだよ、スズのこと。つまんねぇことで死んだら許さねぇかんな…』

「うん…!ありがとう、カグツチ!」


スズの明るい声を聞き、カグツチは彼女を抱き締める腕にさらに力を込めた。



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