カグツチが落ち着いたのを見計らって、スズは1つお伺いを立てる。
朱雀に乗り、外から見守るのはどうだろうか…と。
『朱雀は狭いとこ苦手だろ。都庁の周りを機敏に動けるとは思えねぇ』
「うっ…確かに」
『しょーがねぇから、俺が手貸してやるよ』
「え?」
『俺がおぶって飛んでやるって言ってんの。もしもの時は守れるしな!』
「本当!?ありがとう!」
『おう。じゃあ早速行くぞ!』
「はい!」
笑顔でそう言ったスズが背中にぶら下がると、カグツチはもの凄いスピードで都庁の方へと向かう。
最強コンビの視界に入らないギリギリの場所を飛びながら、スズとカグツチは戦いを見守っていた。
体術と順転の"蒼"を駆使して宿儺を圧倒する五条だったが、攻撃を受けることで王の頭上に浮かぶ法陣は不可侵への適応を進めて行く。
そしてついに、3回目の回転が終わった。
「あと1回…!」
『…なぁ、悟って今まで順転しか使ってねぇの?』
「え、うーんと…確か魔虚羅が出て来てからはそうだったと思う」
『ふーん…』
「何?」
『いや、俺が悟の立場ならもうそろそろ…』
カグツチが続きを言う前に、五条自身がその答えを体現する。
柱の影から出てきた宿儺に対し、彼は反転の"赫"を放ったのだ。
正面からまともにくらった宿儺だったが、その被害は撃った本人が想定していたほどではなかった。
「えっ、あのぐらいで済んじゃうの?」
『展延だろうな…悟の攻撃を読んで、術式を中和したんだろ』
「そんな…このままいったら…」
『適応される…!』
「…さっきの"赫"はさ、まだ炸裂してねぇよ」
五条が落ち着いた声でそう告げた直後、宿儺の背中に"赫"が激突した。
自分の立ち位置を調整して宿儺を誘導し、都庁を一周させた"赫"を当てるのが五条の作戦だったのだ。
そして"赫"に押されるように前へ出てきた王の腹に、五条は止めの一撃を放つ。
その打撃は黒く光っていた。
「『黒閃!』」
スズとカグツチが同時に叫ぶと同時に、白目をむいた宿儺の頭から法陣が落下する。
だが周りが喜びを露わにしようとした瞬間、法陣がガゴンという音を立てて回転した。
それはつまり、五条の不可侵に対する適応が完了したということ。
待ってましたとばかりに、足元に広がる影が五条の動きを封じる。
中からは、黒閃の影響で動けない宿儺に代わって魔虚羅が姿を現した。
左手で体を掴み、右手についているナイフで斬りかかってくる相手を何とかかわす五条。
だがそれでも左肩に大きな傷を負ってしまう。
いつもなら簡単に治せる傷も、ここまでの戦闘の後遺症でなかなかスムーズにいかないようだった。
と、そんな彼が不意に胸元のTシャツをギュっと掴む。
浮かんでくるのは、これをくれた大切で大好きな彼女の笑顔と言葉…
"それは私の陰陽師の力を込めた石です。先生には必要ないかもしれないけど…お守り代わりってことで!"
高専入学に合わせて五条家を出るスズが、最後の夜にプレゼントしてくれた白い勾玉。
もらってからというもの肌身離さず身につけていた五条は、この日も当然のように首から下げていた。
握った手に力を込めれば、温かい呪力が体を巡り、彼の体はあっという間に元通りになった。
「(まさか必要になる日が来るとはね〜でもスズの力感じるの久しぶりかも。やっぱ最高に気持ちいいわ…まぁ本物には負けるけど)」
フッと笑みが漏れた五条は、そのまま彼女の呪力を感じる方へ視線を向ける。
姿は見えなくとも、確かにそこに感じる愛おしい存在が、彼に再び力を与えていた。
「(終わったら全力で抱き締めて、めちゃくちゃ癒してもらわないとね!)」
気合いを入れ直した五条は、目の前に立ちはだかる巨大式神に鋭い視線を向けた。
to be continued...
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