場の空気を切り替えるようにパンと1つ大きく手を叩く家入。
ここから先は、医者である彼女が力を発揮する番だ。
「スズの言う通り、戦いはしばらくお預けだ。その前にまずやることがある」
「やること?」
「はぁ〜…オマエと伏黒の治療だよ」
「あ〜恵はともかく、僕はいいよ。自分で治しながらやってたし」
「いいわけないだろ、あんな戦い方して。今普通にしてるのが不思議なぐらいだ」
「そこは最強だからね!」
「そういうことを言ってるんじゃない。あれだけ無理して何ともないわけないんだ。後遺症が残るぞ?」
「平気だって〜治療するとしても自分で「悟先生!」
不意に愛しい声が聞こえ、五条はそちらへ嬉しそうに顔を向けた。
続きを促すように小首を傾げる彼の元へ、スズは小走りで駆け寄って来る。
そして目の前に立つと、グッと顔を上げ真剣な目を向けるのだった。
「先生、ちゃんと治療受けてください。今硝子さんが言ったように、今回の戦いは本当に体に無理がかかってます。
脳を何回も壊すなんて…誰にも相談しないでやることじゃないです」
「言わなかったこと怒ってる?」
「……怒ってます。でもそれより…あの時先生を止めなかった自分に腹が立ちます」
「! それは違う。スズがそうしたのは、僕のことを思ってでしょ?止めたら、僕の戦いを邪魔しちゃうからって」
「それでも…医療に携わる者として、止めなきゃいけなかった。先生の体を一番に考えるべきでした。
もしこれで、後遺症が残って、歩けなくなったり、喋れなくなったりしたら…私、なんてお詫びしたらいいか…」
「何でスズが謝るの?僕の戦いで、僕が自分で戦い方を決めたの。スズが責任感じることなんか何もない」
「…前に先生言ってくれましたよね?私と一緒にご飯食べたり、遊んだり、任務行ったりしたいって…」
「うん」
「私も同じ気持ちです。まだまだ先生と一緒にいろんなことしたいです。デートも連れてってくれるんですよね?」
「!」
「だから先生には…今まで通り元気でいて欲しい。優しくて、強くて、カッコ良くて「ストップ」
徐々に涙目になるスズの言葉を遮るように、そう言って彼女を強く抱き締める五条。
大勢が見てる前での抱擁に、スズの心拍数は一気に上がった。
しかしそんな状態を気にすることなく、五条は彼女にだけ聞こえる声で言葉を紡ぐのだった。
「先生…?」
「…これ以上スズの言葉聞いたら、ちょっと抑えられる自信ない」
「え?」
「今すぐキスしちゃいそう」
「な、何言ってるんですか…!」
「だってスズが今言ってくれたこと、全部嬉し過ぎてさ…他のこと考えらんねぇんだもん」
「本心を、言った、だけです…!」
「ふっ、余計嬉しいんだけど。てかストップって言ったじゃん。チューしちゃうよ?しかも大人の方」
「ダメです!」
「ふふっ。……ありがとう、スズ。帰る場所があるって幸せだな」
「悟先生…おかえりなさい!」
「(あーもう、本当好き…)スズさ、それキスして欲しくて言ってる?」
「ち、違います…!」
「な〜んだ、残念。…ちゃんと治療受けるね」
「はい!」
「終わったら見舞い来て?」
「もちろんです!先生の好きなものたくさん持って行きますね!」
「んーそれはそれで嬉しいけど、一番好きなものが来てくれるから他はなくてもいいかな」
体を離し、キョトンとする想い人の顔を両手で包み込む五条。
そのニヤニヤした表情を見て意味を察したスズは、途端に顔が熱くなるのを感じる。
そんな彼女のおでこへ唇を寄せようとした五条だったが…今まで大人しかった宿儺が彼に牙をむく。
先程の借りを返すように、顔に軽めの呪力を飛ばして邪魔をするのだった。
「いでっ!」
「誰の主に手を出してる。下がれ、小童」
「このクソジジイ…今はしていい流れだったろ!」
「そんな流れは微塵も感じなかったが」
「ジジイは感覚が鈍いからね〜気づかなくて当然か」
「貴様、いい加減にしろよ?」
「こっちの台詞だわ」
収まったはずの小競り合いが再び始まってしまった。
スズだけでなく、誰もが呆れたような表情を見せる中、2人だけが盛り上がっていた。
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