スズ・虎杖・宿儺がなんやかんやと揉めていた頃…

高専内の霊安室では、五条が伊地知に対して夢を語ろうとしているところだった。


「夢…ですか。」

「そっ。悠仁やスズのことでも分かる通り、上層部は呪術界の魔窟。保身馬鹿・世襲馬鹿・高慢馬鹿・ただの馬鹿…腐ったミカンのバーゲンセール。

 そんなクソ呪術界をリセットする。上の連中を皆殺しにするのは簡単だ。でもそれじゃ、首がすげ替わるだけで変革は起きない。

 そんなやり方じゃ誰も付いて来ないしね。だから僕は教育を選んだんだ。強く聡い仲間を育てることを。そんなわけで、自分の任務を生徒に投げることもある。」

「(それはサボりたいだけでは?)」

「皆優秀だよ。特に3年秤、2年乙骨…彼らは僕に並ぶ術師になる。(スズや悠仁もその1人だった…!)」


自分の大切な生徒達のことを思い、五条は血管が浮き出る程、両手を強く握りしめた。

教えたいことも、やらせたいことも、まだまだたくさんあったのに…

そんなことを考えながら下を向いていた彼に、同級生の家入が声をかける。


「ちょっと君達。もう始めるけど、そこで見てるつもりか?」

「「!」」

「おわっ!!フルチンじゃん!!」

「ごごご五条さん!!いいいいい生き…!」

「クックッ…伊地知うるさい。」

「ちょっと残念。」

「あの〜恥ずかしいんスけど…誰?」


伊地知が動揺するのも無理はない。

今の今まで死んでいた虎杖悠仁が、何の前触れもなく生き返ったのだから…!

おまけに何の後遺症もなく、起きて早々元の元気な状態に戻っているのだから、不思議なことこの上ない。

だが五条はそのすべてを受け入れ、足取りも軽く生徒の元へ歩を進める。


「悠仁!」

「!」

「おかえり!!」

「オッス。ただいま!!」


ハイタッチを交わす五条と虎杖は復活を喜び、互いに笑顔を向け合った。


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見事な復活を遂げた虎杖は、伊地知から渡された服を着ながらキョロキョロと視線を巡らす。

そして自分の隣の簡易ベッドに横たわるスズを発見した。


「あれ?スズまだ戻ってきてねぇのか…まぁ宿儺に相当気に入られてたからな〜」

「…悠仁、それどういうこと?」

「あーなんか俺、宿儺の生得領域?とかいうとこにいたんだけど、スズもそこにいたんだ。」

「!」

「んで、宿儺がめちゃくちゃスズのこと気に入ってたから、まだ解放されてねぇのかな〜と思って。」

「そこにいたスズは死んでなかったんだね?」

「おう!ピンピンしてたよ。」

「そっか。」


虎杖の言葉に、五条は誰にも気づかれないよう小さく安堵のため息をついた。

そして簡易ベッドのヘリに腰かけると、未だ目を覚まさない教え子の前髪にそっと触れた。

普段の飄々とした雰囲気とは違う五条の様子を見て、虎杖は最近気になっていた"あること"を問いかける。


「…そういえばさ、先生。」

「ん?」

「先生とスズってめちゃくちゃ仲良いけど、そんな昔から一緒にいんの?」

「いるねー。初めて会ったのは、スズがまだ小学生の…」


と、そこまで言った五条は不意に会話を止める。

質問を投げかけた虎杖や、2人の会話を見守っていた伊地知や家入も、不思議そうに彼を見やった。

五条が急に会話を止めた理由…

それは、予想外のところから自分の服が引っ張られたからだった。

服を掴んでいる手を辿れば、そこには寝起きのような顔でボーっとこちらを見つめるスズの姿があった。


「悟先生…?」

「おはよう、スズ。おかえり。」

「ただいま、先生。」


穏やかな表情の五条に頭を撫でられると、スズもまた安心したような笑顔を向ける。

そして担任の手を借りて体を起こしたスズは、隣から聞こえる虎杖の嬉しそうな言葉にも元気な反応を見せたのだった。



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