スズが校内へ入り階段を駆け上がっている間も、徐々に呪力が大きくなっていく。

そして問題の部屋がある階に到着した途端、一気に呪力が跳ね上がった。


「(! ヤバイ!お札取れた…?)」


今までとは比べ物にならない大きさの呪力を感じると同時に、部屋から飛び出してくる生徒が2人。

スズが追っていた例の先輩と、おまけにもう1人男子高校生がいる。

どちらも相当なパニック状態でこちらに向かって走ってきていた。


「大丈夫ですか!ケガは!?」

「だ、大丈夫…!でも、あ、あれ何なの!?」

「呪霊です!詳しく説明してる時間ないので、今はとにかく逃げてください!」

「「分かった…!」」

「あとこれを。」

「これ何か見たことある…!」

「これは"形代かたしろ"と言って、自分の身代わりみたいなものです。もし逃げてる途中で呪霊に見つかったら、これを投げつけて!」


"形代が呪霊を抑え込んでる間に、全力ダッシュで逃げてください"

スズの言葉に、怖がりながらも力強く頷いた2人は、すぐさま階下に向かって走り出した。

それを見送ったスズは、部屋に置き去りにされてるであろう特級呪物の回収へ…!

部屋の前にうじゃうじゃといる呪霊を呪力で倒し、部屋に突入した彼女の前には特級呪物が…


「ない!!!えっ、まさかあの先輩…持ってったの!?」


そう。スズは、あんな不気味なもの見た瞬間に絶対に手放すと思っていたのだ。

だからまずは2人を逃がし、その後で置き去りにされている特級呪物を回収する手順だった。

故にこの展開は予想外である。

だが先輩が呪物を持っていると分かればやることは1つ。


「…追わなきゃ。呪物持ったまま逃げるのは危なすぎる…!」


慌てて部屋を出ようとしたスズだったが、素直にあの2人を追うことはできなかった。

目の前に、前日ラグビー場で見た二級呪霊が立ちはだかっていた…


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一方、学校へ向けて走っていた虎杖・伏黒ペア。

ものすごいスピードで走りながらも、伏黒はスズへの電話をかけ続けていた。


「クソッ!何で出ねーんだよ、スズ…!」

「スズって誰だ?オマエの友達か?」

「…そうだよ。オマエの先輩を追ってたから、今学校にいるはずなんだ。早く行かねーと!」

「そっか。…なあ、お札ってそんな簡単にとれんの?」

「いや、呪力のない人間にはまず無理だ!普通はな!今回のは中のモノが強すぎる!封印も年代物、紙切れ同然だ!」

「(つってもなあ…"呪い"なんていまいちピンとこねえ。ただの痛い人だったらどうしよう。)」


なんて呑気に構えていた虎杖だったが、学校の前に着いた途端、その顔色が変わる。

呪いと無関係な生活を送ってきた彼でさえ感じる程、辺りは異様な圧に包まれていた。


「オマエはここにいろ。部室はどこだ?」

「! 待てよ!俺も行く!やばいんだろ!?二月やそこらの付き合いだけど友達なんだ!放っとけねえって…」

「ここにいろ。」


今までと明らかに違う表情、違う雰囲気の伏黒に、虎杖は黙り込む。

これだけの圧を放つ呪霊がいる以上、普通の人間が行ったところでただ死を待つだけ。

それが分かっていて彼を連れて行くほど、伏黒は非常識な男ではない。

虎杖をその場に残し、伏黒は校内へと向かった。



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