「急急如律令呪符退魔!」
呪霊を退散させる呪文を唱えながら、目の前の二級呪霊に呪符を飛ばすスズ。
その顔や体には痛々しい傷があり、何度となく呪霊から攻撃を受けたことを示していた。
一方の呪霊はといえば、ダメージを受けてはいるものの、動きが止まるまでには至っていない。
普段であればもう少し効果的な攻撃ができるのだが、今日は呪力量が本調子ではないため苦戦を強いられていた。
と、その時…
スズはある人物の呪力を感じ取った。
「(恵の呪力…!どうしよう…こいつを連れて行くのは申し訳ないけど、合流して一緒に戦った方が勝てる確率は上がるかもしれない。でも…!)」
伏黒の位置は、スズが今いる場所のちょうど真下にあたるところだ。
廊下に穴を開ければすぐにでも合流できる。だが果たしてそれで本当にいいのか…
悩んでいたのは、時間にしてほんの数秒のことだった。
だがそれでも目の前の呪霊から意識を外したのは事実。
次の瞬間、スズの体は呪霊に捉えられていた…
------
----
--
校内に突入した伏黒は、途中出くわす呪霊を倒しながらスズと呪物を探す。
そして外に残してきた虎杖の思わぬ助けもあり、何とか呪物と虎杖の先輩2人を救出したのだった。
残る気がかりはただ1つ…スズだ。
「(スズがいねぇ……無事でいてくれよ…!)」
「これが?」
「ん?ああ、特級呪物"両面宿儺"。その一部だ。」
「りょうめ…?」
「言っても分かんねぇだろ。危ねぇからさっさと渡せ。」
「はいはい。」
「オマエは先に外出てろ。俺はスズを…」
そう言いながら呪物である両面宿儺の指を受け取ろうとした矢先、天井から突如現れる呪霊の手。
伏黒は自身の術式である式神の"玉犬"に指示を出し、虎杖とその先輩を安全な場所へ突き飛ばす。
「逃げろ。」
「伏黒!」
体勢を立て直しながら虎杖が目を向ければ、そこにはさっきのよりヤバそうな化物がいた。
おまけにそいつの手には2人の人間が握られている。
「め、恵…」
「! スズ!!」
伏黒の声に呼応するかのように、呪霊はスズを掴んでいた方の手を離し、自由落下している彼女を尾で振り払って外へ吹っ飛ばした。
今日自分が最後に見た姿が思い出せないほどボロボロになっていた彼女を見て、伏黒の呪力がグンと上がる。
だが反撃をしようと式神召喚の手印をした途端、呪霊に投げつけられ、スズと同じように外へ飛ばされてしまったのだった。
- 30 -
*前次#
ページ:
第0章 目次へ
第1章 目次へ
第2章 目次へ
第3章 目次へ
第4章 目次へ
第5章 目次へ
第6章 目次へ
章選択画面へ
home