教え子のベッドを占領する五条と、リラックスし過ぎてテレビをつけたまま寝落ちしたスズ。
昔からの友人や関係者達がこの2人について話す時、必ずと言っていいほど使う言葉がある。
"ドSで無茶苦茶な兄と、それに振り回される不憫な妹。"
だが一方でこうも言われている。
"仲が良すぎて、気持ち悪いぐらいいつも一緒にいる。"
今回はそんな、破天荒だけど超仲良しな五条とスズのちょっとした昔話…!
第11.5話 兄と妹
五条が初めてスズに出会ったのは、彼女がまだ小学生の頃…
今から5年程前のことだ。
その日五条はとある任務に出向いており、高専へと戻るところだった。
不意に昔の同級生と似た呪力を感じ、彼は驚いて足を止める。
少し集中して呪力を追えば、出処はあっという間に判明した。
「(…どうせ高専帰ってもやることないし、暇つぶしに行ってみるか。)」
任務終わりならば、普通は報告書作成が必須のはずだが、彼がそれをやるはずもなく…
"伊地知に任せればいいや"と軽く考え、五条は呪力の発生源へと足を向けた。
呪力を消し、空中から現場を見下ろせば、そこには電柱の下にしゃがみ込むランドセル姿の少女がいた。
傍から見れば、電柱に向かってブツブツ何かを言っているヤバい奴でしかない。
だが五条には分かる…彼女はその場にいる猫の地縛霊と会話をしながら除霊をしているのだ。
数分後…
無事に除霊が終わったのか、少女は何事もなかったかのように歩き出す。
その後も彼女は、道中にいる浮遊霊や生き霊などを片っ端から除霊していった。
しかし除霊の度に少女から流れ出る特殊な呪力が、少しずつ強い呪霊を引きつけていて…
少女自身も何かを感じているようだが、ハッキリとその存在を認識していないため、特に対応もせず歩き続けていた。
五条はそんな彼女の様子を見つつ空中から後をつけていたのだが、呪力を0にしているにも関わらず、少女は時折空を見上げるような仕草をする。
「(アイツ、呪力に対してかなり鋭いな…)」
昔の同級生に呪力が似ているということだけで来てみたが、少女の持つ素質自体にも興味が出てきた五条なのであった。
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時は流れ、夕方…
辺りが薄暗くなってきた頃、相変わらず除霊しまくりの少女は広めの公園に到着していた。
そしてそこにいる子供の地縛霊を相手に、また除霊を始めたのだ。
だが始めたはいいものの、ここは今までと違い、周りに人がいない上に敷地も広い。
ずっと少女をつけていた呪霊達にとっては、襲うのに格好の場所だった。
さらに悪いことに、今彼女は目の前の地縛霊に集中しており、真後ろに迫る呪霊に全く気づいていないのだ。
呪霊が今にも少女へ手を出そうとしたところで、双方の間へ割り込んだ五条は、説得をしながら除霊をする少女を見下ろす。
「だからね、ここはもう君のいるところじゃ…うわっ!お兄さん誰!?」
「君はなんで僕には気づくのに、コイツらは認識できないの?」
「コイツらって…ひっ!何そのお化け!!」
「お化けじゃなくて呪霊…って、そうか。君、陰陽師だよね?」
「うん!だから今も除霊してたんだ!」
「(陰陽師が相手にするのは主に人間や動物の霊。呪いから生まれた呪霊を知らなくても不思議はない。知らないものは認識できないってことか…)」
呪霊に怯え足にしがみついている少女を放置し、五条は考えを巡らす。
彼女の特殊な呪力と陰陽師の力、ここに呪術師としての実力がつけば…
昔の同級生にしてやれなかったことが出来るかもしれない。
それにこのまま彼女を放置していたら、いつか今日みたいに呪霊に襲われて命を落とす可能性がある。
そう考えた五条は、片手で呪霊を退けながら小さな少女に話しかけた。
「オマエ、名前は?」
「え、あ、木下スズ!」
「スズね…俺は五条悟。呪術高専で教師をしてる。」
「じゅじゅつこーせん?何それ!」
「あとで全部説明してやるから、今はとりあえず…将来的にそこに通うことになるってことだけ理解しとけ。」
「へ?」
「いいか、スズ…俺がオマエを陰陽師兼呪術師にする。」
何が何だか分かっていないスズに、五条はニヤリと笑みを見せた。
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