月日は流れ、今日は小学校の卒業式。

いつも通り校門前まで迎えに来た五条は、鼻をすすったり、目を赤く腫らしたりしている親子をボーッと眺めていた。

と、一際大きな声で泣いている人物がやって来る…

"まさか…"と思いつつ五条が目を向ければ、そこには大泣きしながらこちらへ走ってくるスズの姿があった。


「悟先生ー!!」

「うわっ、オマエ汚ねっ!鼻水つくだろ!」

「うー…寂しいよー…」

「無事に卒業できたんだから、少しは嬉しそうにしてろよ。…俺が言いたいこと言えねぇだろ。」

「言いたいことってなんですか…?」

「…卒業おめでと。ん。」

「! 高いお菓子だ…!先生、ありがとー!!」

「おわっ!結局鼻水ついたじゃねぇか!」


走ってくるなり抱きつくスズに、口ではなんやかんやと言いながらも、お祝いとして彼女が好きなお菓子を渡す五条。

それに感動して、また涙と鼻水を垂れ流すスズに、五条は少し笑みを見せながら彼女の頭を撫でてやるのだった。


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スズが落ち着くのを待って、2人は揃ってとある場所へと向かっていた。

その場所とは、彼女がこれから長いことお世話になる呪術高専である。

入学自体はまだできないが、学長への挨拶は早い方がいいということで向かう次第だ。


「先生、学長って怖い?」

「んー怖くはないよ。でも下手なこと言ったら、即追い出されるかな。」

「それは怖いっていうんですよ!」

「自分が思ってることを伝えられれば大丈夫だって。気楽にいきな〜」


五条が面倒を見ている時点で、ある程度は学長も理解をしているのだが、本人に会わないことには本当の意味での納得はできないらしい。

そうして移動すること数十分…

スズは呪術高専内にある道場のような場所へ辿り着いた。

そこで学長である夜蛾と初対面を果たし、いよいよ面談が始まるのだった。


「その子が?」

「木下スズです…!」

「君は何故ここに来た?」


夜蛾の威圧感満載の問いかけに、スズはビビりながら隣に立つ五条にチラッと目を向ける。

ゆっくり頷きながら"落ち着け"と口パクで伝えてくる彼に、スズは勢いよく首を縦に振ってから話し始めた…


「…私は小さい頃から、陰陽師である両親がたくさんの人を除霊している姿を見てきました。

 でもその中には、力が足りなくて除霊しきれず、死んでしまう人もいたんです。

 私も陰陽師として生まれたからには、いつかきっとこういうツラい経験をしなきゃいけないんだと思ってました…

 そんな時に悟先生に出会って…私には特殊な力がある、その力でもっとたくさんの人を助けられるって言ってもらって…それがすごく嬉しかったんです。」

「オマエ、そんな風に思ってたの?」

「はい…!私、小さい時から決めていることがあって……人生が終わる時、"人"として死にたいんです。

 自分にしか出来ないことがあるのに、それをやらないで死ぬのは…"人"じゃないと思うから。

 だから…もっとたくさんの人を助けられる力が身につくなら、先生についていこうって思ったんです。

 …それが、私がここに来た理由です。」

「……合格だ。その歳の割に、随分しっかりした考えを持っているな。」

「あ、ありがとうございます…!」

「悟が目をかけるだけのことはある。」

「当たり前でしょ。見込みのない奴に時間かけるほど暇じゃないんで、僕。」


そう言いながらニヤリと笑った五条は、安心したような表情を見せるスズの頭にポンと手を乗せた。

そんな2人のやり取りを見守っていた夜蛾は、今後のスズの動きを改めて確認する。


「で、今後のことだが…初めに言っていた通り、高専入学まではオマエの家に居候でいいんだな?」

「いいですよ。スズは体術のレベル0なんで、一からガッツリ鍛えます。」

「ひっ…!」

「中学の勉強はどうするつもりだ?」

「それは硝子と七海、あと伊地知にも依頼済みです。それと実践でいろいろ覚えさせるんで、今後僕の任務には必ず連れて行きますから。」

「…分かった。スズのことはオマエに一任する。頼んだぞ。」

「はいはーい。じゃスズ、行こっか。」

「はい!」


こうして無事に高専入学が約束されたスズを連れて、五条は一旦自宅へと戻るのだった。



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