翌日からスズは、五条が組んだ鬼畜な時間割で過ごし始めた。
まず午前中は、8時から家入による理系科目の授業、続いて10時から七海による英語と数学の授業が行われる。
それから昼休憩を挟んで、13時からは伊地知による国語と社会の授業。
そして学科が終わり次第、体育と称した体術特訓が始まる。担当はもちろん五条である。
しかし朝から五条に任務が入っていれば、それが最優先。学科は後回しだ。
初めての環境、初めて出会う人、習ったことのない学科や体術…
そのどれもがスズにとっては大きな壁となっているが、持ち前の元気と素直さで乗り越えようと奮闘している姿は、各科目の教師陣からも高評価であった。
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家入との授業にて。
「…スズ、寝るなー。」
「! す、すいません!」
「昨日も遅くまで五条に絞られたの?」
「はい…体中が筋肉痛です。」
「ふふっ。それだけ期待してるってことだから頑張れ。」
「押忍!」
「あとさ、スズ。アンタの回復能力のことだけど…自分以外の人間も治せるんだよね?」
「あ、はい!時間はかかっちゃいますけど…」
「その力があるだけで十分。他の人間を治せる術師ってすごく少ないんだ。だから私もスズには期待してるんだよ。」
「硝子さん…!私、頑張ります!」
「うん。じゃあ手動かそうか。」
「はい…」
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七海との授業にて。
「七海先生!」
「なんですか?」
「この問題、まず言っている意味が分かりません!」
「そんなことはありません。ちゃんと読めば分かるようになってます。」
「…七海先生が読んでくれないと分かりません!」
「誰が読んでも同じです。集中してください。」
「……先生の声で聞きたいなぁ〜!」
「スズ…君、五条さんに似てきましたね。」
「え…ど、どこら辺がでしょうか…」
「その屁理屈を言いながら逃げようとするあたりです。」
「うっ…」
「このままでは君の教育に良くないので、今度私と任務に行きましょう。」
「えっ!本当ですか!?」
「はい。たまには違う人間と組んだ方が、いい刺激になりますから。」
「やったー!よろしくお願いします!」
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伊地知との授業にて。
「伊地知さん、ここって……伊地知さん?」
「はっ…!し、失礼しました!何ですか、木下さん。」
「今日はまた一段とお疲れのようですけど、大丈夫ですか?」
「大丈夫…ではないですね。ちょっと昨日、報告書作成が終わらなくて…」
「報告書…まさかとは思うんですけど、それって悟先生が作らなきゃいけないやつだったりしますか…?」
「…はい。」
「……なんかすみません。もしその書類が私でも作れるなら、先生の代わりに私が「本当ですか!?」
「うおっ!ビックリした…!ほ、本当です。そうすれば少しは伊地知さんの仕事減り「減りますとも!!」
「食い気味に来ますね…」
「じゃあ早速書き方をお教えしますね!」
「お、お願いします…!(相当キツかったんだな…伊地知さん。)」
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五条との授業にて。
「はい、10分休憩〜」
「はぁ…はぁ…づがれだー…」
「でも前よりだいぶ動けるようになったじゃん。」
「本当ですか!?」
「うん。まぁ最初がポンコツ過ぎたけどな。」
「…」
「そういやさ、スズ。」
「ん?」
「オマエ、伊地知の仕事手伝ってんの?」
「…伊地知さんの仕事を手伝ってるんじゃなくて、先生の仕事を伊地知さんがやってるから、それを手伝ってるんです!」
「…てへっ!」
「"てへっ"じゃないですよ!可愛くないですから!ちゃんと書類作らなきゃ駄目でしょ。疲れてるのは分かりますけど…」
「は?疲れてねーし。」
「じゃあやってください。」
「……スズ〜!」
「ギャッ!!暑いからくっつかないでくださいよ!」
「これからもたくさん美味い店連れてくからさ〜」
「…だから何ですか?」
「今後ともよろしくね。」
「…しょうがないなぁ。」
こんな具合に、各教師陣との大変ながらも楽しい日々を過ごすうちに、気づけばあっという間に1年が過ぎていた。
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