スズの単独呪霊退治から幾日かが経った、とある日の夜…
一向に眠気が訪れない五条は、夜の散歩にでも行こうかと自室を出た。
そのまま外に行こうとしたのだが、呪力の感じでスズが起きているのを知ると、お供として連れて行くため彼女の部屋の前に向かった。
しかしノックをする直前、中からドサドサッというものすごい音と、"ギャッ"という声が聞こえてくる。
"スズ入るぞ?"と一声かけてからドアを開ければ、そこには頭を押えてうずくまるスズと、周りに散らばった大量の本があった。
「…オマエ、なにしてんの?」
「せ、先生…いや、立ち上がる時に本棚に手ついたら、棚が外れて頭に本が…」
「はぁ…だからもうちょいちゃんとした本棚買えって言っただろ。」
「押忍…」
「手伝ってやるから、さっさと片づけるぞ。」
「いいんですか?」
「うん。今ちょっと寝れなくて外出ようとしてたとこだから。」
「ありがとうございます!先生、珍しく優しい!」
「俺はいつも優しいっつの。」
スズの鼻をつまみながらそう言うと、五条は棚を直した後、本棚の上の方から順に本を並べ始めた。
それから2人で黙々と作業すること30分…
スズの部屋の本棚は無事に元通りになった。
夜にも関わらず手伝ってくれた師匠にお礼をしようと、スズはミニキッチンでお茶を入れるため席を外す。
「先生、お茶でもどうぞ〜…って、寝てる?」
「スー…スー…」
だが戻ってきてみれば、五条はスズのベッドですっかり寝入っていた。
よっぽど疲れていたんだろうと思い、彼女はそっと布団をかけてから、部屋の明かりを少し落とす。
そして手元の電気をつけると、ベッドに寄りかかりながら読書を始めるのだった。
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1時間後…
ゆっくりと目を開けた五条は、すぐ近くにいるスズの服をクイッと引っ張った。
「スズ…」
「あ、先生。…寝れないって言ってましたけど、少しは疲れ取れましたか?」
「だいぶ…なんか久々にちゃんと寝た気がする。」
「え、大丈夫ですか…?もう少し寝てていいですよ。」
「…」
「先生…?」
「…今日さ、ここで寝ちゃ駄目?」
「あ、いいですよ!私まだ起きてるんで、ベッド使ってください。」
「じゃあ端で寝てるから、スズも寝る時ベッド使えよ。絶対床とかで寝んなよ。」
「えっ!そんな無茶苦茶な…!私寝相悪いし…って、もう寝てるし。」
スズが反論する間もなく、五条はモゾモゾと布団に潜り込むと、より深い眠りに入っていった。
この日以降、五条は事ある毎にスズの部屋に上がり込んでは、まったり過ごしたり、ベッドを占領して翌日を迎えたりする日が増えた。
むしろ自分の部屋にいるより、スズの部屋にいる方が多いぐらいである。
その光景は、2人が本当の兄妹かと錯覚する程に仲睦まじい姿だった。
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