隣の校舎の屋上へと飛ばされたスズは、ぶつかる直前に呪力でクッションを作り、何とか直撃を避けていた。
それでも体は傷だらけ、呪力の残量は残りわずかで力が入らず、満身創痍状態である。
と、そこへ大きな音と共にこちらへ向かってくる1つの影。
その見覚えのある髪型と服装を確認すると、さっき自分にやったのと同様に飛んできた彼の下に呪力のクッションを作った。
「ハァ、ハァ…恵、大丈夫!?」
「ゲホッ。何とか…スズの呪力がなかったら死んでたよ、ありがとな。…それよりオマエは?大丈夫なのか?」
「んー…程よくヤバイかな!」
「全然程よくじゃねぇだろ。呪力ほぼ空じゃねーか!」
「…途中で追加の除霊任務が来ちゃって。」
「はぁ!?馬鹿か!だったら一言連絡入れろ!!」
「ご、ごめんなさい。」
「…無事じゃねーけど、生きてて良かったよ。」
助けてくれたスズの頬に手を触れながら彼女の呪力を測れば、自分の半分以下しか残っていないことに驚く伏黒。
そしてお人好しの同級生に呆れながらも、再び生きて会えたことに安堵するのだった。
だが再会を喜んでいる時間はない。
先ほど2人を吹っ飛ばした張本人が後を追って屋上へとやって来る。
頭部からの流血で意識が朦朧としている伏黒に、呪力が尽きそうでフラフラのスズ。
そこへ、唯一元気なあの少年がものすごい力で呪霊を殴りながら登場した。
「(なんつー馬鹿力!!)」
「恵が追ってた子だよね?マジか。すごっ…!」
「大丈夫か!?スズも!すげー吹っ飛んでたけど…!」
「あ、うん!何とか…!ってか、何で名前…」
「伏黒が呼んでたからさ!俺は虎杖悠仁、よろしく!」
「(この状況で自己紹介できるとかぶっ飛んでんな!)お、おぉ!よろしく、悠仁!」
「逃げろつったろ。」
「言ってる場合か。今帰ったら夢見悪ぃだろ。それにな…こっちはこっちで面倒くせぇ呪いがかかってんだわ。」
意志のある強い目で呪霊を睨みつけると、虎杖は相手の攻撃を避けつつ強烈な蹴りを食らわせた。
しかし彼がいくら強くても、ただの人間では呪霊は倒せない。
結果、呪霊からの強力な一撃が虎杖の頭部に直撃し、スズ達がいるところへ転がってきた。
「ツッ…!」
「呪いは呪いでしか祓えない。」
「はやく言ってくんない?」
「何度も逃げろつったろ。今あの2人抱えて逃げられるのはオマエだけだ。さっさとしろ。このままだと全員死ぬぞ。呪力のねぇオマエがいても意味ねーんだよ。」
「大丈夫…?血だけでも止めるからちょっとじっとしてて。」
「スズ、やめとけ。オマエも限界だろ。」
「もう少しなら大丈夫!」
「(どっち道オマエらは死ぬ気じゃねーか!)」
スズの呪力で少し回復した虎杖は、まだ立てずにいる彼女にお礼を言いながら立ち上がった。
そしてふと頭に思い浮かんだ質問を投げかける。
「なあ、なんで呪いはあの指狙ってんだ?」
「喰って、より強い呪力を得るためだ。」
「なんだあるじゃん、全員助かる方法。」
「あ?」「ん?」
「俺にジュリョクがあればいいんだろ。」
「悠仁、何言って…」
「なっ!馬鹿!!やめろ!!」「ダメ!!」
スズと伏黒が止める間もなく、虎杖は自分のポケットに入っていた特級呪物を口の中に放り込んだ。
呪物自体がそもそも有害であるのに、今彼が飲み込んだのは特級に値するものだ。
無事で済まないどころか、間違いなく死に直結する。
そうしている間にも、目の前の呪霊が彼目掛けて向かってきていた。
スズ達が固唾を飲んで虎杖の様子を伺う中、呪物取込の結果がついに現れる…!
「ケヒッ、ヒヒッ!ゲラゲラゲラゲラ!!」
「「!」」
「ああやはり!!光は生で感じるに限るな!!」
右手が鬼のように変わり、顔に文様を浮かべた虎杖は、一瞬で二級呪霊を祓い、笑い声をあげるのだった…
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