術式を使用し、一瞬で高専へと戻ってきた五条とスズ。
特訓場である地下へと降りて行けば、そこにはクマの呪骸を抱えながら映画に見入っている虎杖がいた。
「へぇ、意外と…」
「はい。いい感じですね。」
「ね。飲み込みが早い。」
階段を降りながら小声でそんな会話をする2人。
思っていたより順調に特訓を進めている虎杖に感心しているようだ。
そして2人が揃って彼の名前を呼べば、虎杖は弾かれたように振り返った。
第15話 領域
「「悠仁。」」
「五条先生!?スズまで!」
「(話しかけても問題なし。早めに出力上げて、さっさと次の段階進めそうだね。)」
「(やっぱり悠仁すごい…!これならすぐ強くなれるかも!)」
「用事は!?」
「出かけるよ悠仁。」
「えぇ!?」
「課外授業。呪術戦の頂点…"領域展開"について教えてあげる。」
「クマ預かるから、靴履いてきていいよ〜」
そう言うスズにお礼を言ってから、虎杖は部屋の隅にある靴箱へ向かう。
この偶然生まれた一瞬2人になるタイミングで、五条はスズにこの後の移動について声をかけた。
「スズは僕の背中にぶら下がってね。」
「えっ、何で!?いいですよ、先生の傍にいれば大丈夫だし。」
「…ほら、帰りは悠仁を抱えなきゃいけないでしょ?その状態でスズの手まで掴んだら両手塞がっちゃうじゃん。
術式使うなら、どっちかの手は空いてた方がいいからさ。ね?」
スズの顔を覗き込みながらそう言う五条。
彼のレベルなら、手なんて使おうが使うまいが術式なんて自由自在である。
故に片手が空いてた方がいいというのは、スズにくっついてもらいたいがための大嘘だ。
スズも術式に手は関係ないと思っているし、そもそも背中にぶら下がるなんて恥ずかしすぎると返事を渋っていると…
虎杖がまだ戻ってこなそうなのを確認した五条は、スズに対していわゆる"壁ドン"をして迫った。
「! せ、先生…?」
「背中にくっつくのそんなに恥ずかしい?」
「は、恥ずかしいですよ…!今までしたことないし…」
「俺がやるのは平気じゃん。」
「それはそれです!ほら、悠仁戻って来ますから…!」
「…俺の言うこと聞いてくれないと……その悠仁の前でもっと恥ずかしいことしちゃうけど、いい?」
「なっ…!」
壁ドン状態のまま、そう耳元で囁いた五条は怪しい笑みを見せる。
長年の付き合いで彼が本気だと見抜いたスズは、顔を真っ赤にしながらも何とか距離を取ろうとした。
が、五条の長い手足がそれを許さず、彼女は結局彼の間合いから抜けられなかった。
そして…
「わ、分かりました…!背中に乗りますから…!」
「やった!じゃあ早く行こ。悠仁準備できた〜?」
「できた!って、スズ顔赤くね?」
「あ、赤くない…!早く行こっ!」
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