「私は高専関係者に顔を見られるわけにはいかないから、ここで帰らせてもらうよ。
助けたいなら助ければいいさ。呪霊にそんな情があるかは知らないけどね。」
「〇△※☆」
「よく言うよ、呪霊の分際で。……さて、私は実験の計画でも練ろうかな。」
崖の上で呪霊と会話をしていた夏油は、そう呟きながら怪しい笑みを浮かべた。
彼が向ける視線の先には、五条の傍で笑顔を見せているスズの姿が…
彼女に対する何らかの計画が動き出そうとしていた。
第16話 情
場所は変わり…
崖の下には、呪霊の頭を足蹴にしている五条をスズと虎杖が囲む形で見守っていた。
「命令されて動くタイプじゃないか…僕を殺すと何かいいことがあるのかな。どちらにせよ相手は誰だ?はやく言えよ、祓うぞ。…言っても祓うけど。」
「っていうか、呪いって会話できんだね。普通すぎてスルーしてたわ。」
「階級が上の奴はね。でもあれだけ普通に喋ってるのはすごく稀…っ!?先生っ!!」
「!」
虎杖との会話中、突然何かを感じ取ったかのように声を上げるスズ。
その直後、五条の目の前にキレイな花を咲かせた太い枝が突き刺さった。
誰もが意表を突かれる中、刺さった枝を中心に、辺り一面に様々な種類の花が咲き乱れる。
「お花だ〜」「素敵〜」
「(…っと!呪術?だよな。戦意が削がれる。)スズ、戻ってこい。」
「! 押忍…!」
花にかけられた呪術の影響で戦意が奪われ、ほんわかした雰囲気になりかける3人。
そしていち早く正気を取り戻した五条が片手で頬を挟むことで、スズもまた意識を戻した。
だが敵の攻撃はそれだけでは終わらず、どこからか発生した木の呪霊によって、完全に油断していた虎杖が足を取られ動きを封じられた。
スズと五条が宙ぶらりん状態の虎杖に気を取られている間に、敵は頭だけになった漏瑚を奪ってその場から走り去ろうとする。
「先生、スズ、俺は大丈夫!!ソイツを追って!!……ゴメン嘘!!ヘルプ!!」
「スズ!」
「追います!」
虎杖救出のため木の呪霊に攻撃を加える五条が呼ぶより前に動き出していたスズは、足に呪力を込めトップスピードで敵を追う。
だがもう少しで手が届くというタイミングで、敵はバッとこちらを振り返った。
五条の無限があることを忘れ、咄嗟に防御の姿勢を取った彼女に強力な呪力が襲いかかる。
その勢いに押されて自分達がいるところへ転がってきたスズの元へ五条はすぐさま駆け寄った。
「平気か?」
「はい…すみません。先生に無限つけてもらってるの忘れてて…逃げられちゃいました。」
「んなこといーよ、スズが無事なら。ケガしてないよな…?」
「あ、はい…!だ、大丈夫です!」
スズに目線を合わせるようにしゃがむと、五条はその頬に手を添えて無事を確かめる。
そうして彼女の元気な姿を確認すると、安心したような笑顔を見せるのだった。
「(トップスピードのスズから逃げるか…おまけに気配を消すのが上手いな。火山頭よりよっぽど不気味だ。)」
「どーもスミマセンでした。私のせいで逃げられてしまいまして…でもここに連れてきたのは先生ですよね?」
「せ、先生…悠仁が土下座してます。見て聞いてあげて…!」
「このレベルの呪霊が徒党を組んでるのか。楽しくなってきたねぇ。」
教え子の訴えを全無視し、去って行った呪霊に想いを馳せる五条。
そんな担任の姿をスズと虎杖がボケーッと眺めていると、不意にこちらを振り向いた五条が話しかけてくる。
「悠仁…っていうか皆にはアレに勝てる位強くなってほしいんだよね。」
「アレにかぁ!!スズももっと強くなんなきゃダメなの?」
「もちろん!まだまだ全然だよ…!」
「目標は具体的な方がいいでしょ。いや〜連れてきて良かった〜」
「いや、何が何だか分かんなかったんだけど…マジか、この人。」
「目標を設定したら、後はひたすら駆け上がるだけ。ちょっと予定を早めて、これから一月映画観て僕と戦ってをくり返す。」
「先生と!?一月後、俺生きてるかなぁ。」
「大丈夫、スズもやってたから!その後は実戦。重めの任務をいくつかこなしてもらう。基礎とその応用しっかり身につけて、交流会でお披露目といこうか。」
「いいですね〜!皆ビックリするだろうな〜」
「だよねー!」
「はい、先生!!」
「はい、悠仁君!!」
「交流会って何?」
「え、悟先生まさか…」
「……言ってなかったっけ?」
その後交流会について虎杖に説明をしながら、3人は高専へと戻ったのだった。
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