自販機ゾーンにて、東堂から女性のタイプを聞かれた伏黒。
面識のある真依とは違い、今日が初対面の東堂とそういった話をすることに抵抗を示せば、彼はすかさず自己紹介をしてくる。
東堂曰く、人の性癖にはその人物の全てが反映されるらしい。
「女の趣味がつまらん奴は、ソイツ自身もつまらん。俺はつまらん男が大嫌いだ。
交流会は血沸き肉踊る俺の魂の独壇場。最後の交流会で退屈なんてさせられたら、何しでかすか分からんからな。
俺なりの優しさだ、今なら半殺しで済む。答えろ伏黒。どんな女がタイプだ。」
「(釘崎は丸腰だ。揉め事は避けたい…)」
能天気に相手の夏服に興味を持つ同級生を横目に見ながら、伏黒はこの場の収め方を考える。
結果…無駄な争いをしないためには、何はともあれ東堂の質問に答えるのが良さそうだった。
そうして自分の好みを振り返る伏黒。
彼の脳裏には、長いこと寝たきりの姉の姿が浮かぶ。
"人を許せないのは悪いことじゃないよ。それも恵の優しさでしょう?"
そして続けざまに浮かぶもう1つの顔…それはいつも明るい見慣れたあの顔。
だが一方で、今はどうしたって会うことが叶わない…そんな顔だった。
"自分にしか出来ないことがあるのに、それをやらないで死ぬのは"人"じゃない。私は…最後"人"として死にたいの。"
「(! 何で今スズの顔が出てくんだよ…!)」
自分が中学の頃から知っているスズは、伏黒にとって危なっかしくて何かと手のかかる友人だった。
なのに最近、五条や虎杖が彼女と関わる度にモヤモヤしている自分がいる。
そんな自分の変化に戸惑いながらも、伏黒は東堂からの問いかけに答えた。
「…別に好みとかありませんよ。その人に揺るがない人間性があれば、それ以上は何も求めません。」
「うふふっ。」
「悪くない答えね。巨乳好きとかぬかしたら私が殺してたわ。」
「うるせぇ。」
伏黒の回答に好意的な反応を示す女性陣とは対照的に、東堂の表情は冴えない。
それどころか"退屈だよ"と呟いた瞬間、恐ろしい程の殺気を飛ばしてきたのだった…
第17話 退屈
時を同じくして、スズもまた自販機ゾーンの近くを歩いていた。
世間的には"意識不明"と報告されている以上、あまりフラフラと外を歩いてはいけないのだが…
今日の彼女には大事な目的があった。
「(悟先生の呪力は…っと、こっちだな。)」
スズは今五条の呪力を探り、彼のことを尾行しているのだ。
その発端となったのは、今から30分程前のこと。
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「スズ〜俺、ちょっと出かけてくるから〜」
「あ、は〜い!…どこ行くんですか?」
「…俺のこと気になる?」
「! べ、別に気になりません!」
「え〜気にしてよ〜!でもまっ、今日のは全然大したことじゃないから。すぐ帰ってくるよ。」
優しい表情でスズの頭を撫でると、五条は名残惜しそうに出かけて行った。
口では"大したことない"と言っていた彼から何となく不穏なものを感じ、また同時に京都校メンバーの呪力を感じたことでスズはある1つの仮説を立てる。
「(もしかして京都校の学長に会いに行くのかな…?)」
だとしたら、上層部から煙たがられている自分の話が出るかもしれない。
そのことでまた師匠に迷惑をかけてしまうと思ったスズは、居ても立っても居られずこっそりと五条の後を追いかけたのだった。
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