地下室での朝食を終えると、お互い任務があるということで解散することに。

また夜にでも集まろうと約束をして、スズは地下室を出たのだった。

そして向かうは、今回一緒に任務に行く人物との待ち合わせ場所。

集合時間より少し早めに着いたスズだったが、そこには既に待ち人がいた。


「先輩!」

「!」

「すみません、お待たせしました…!」

「全然。俺が早く着き過ぎただけだからへーき。」


そう言って笑顔を向けるのは、2年の狗巻棘だった。

任務を共にするのはだいぶ久々な上に、スズが奇跡的な復活を遂げたこともあり、狗巻は今日の任務をとても楽しみにしていた。

早めに到着したのも、その想いの表れだろう。

何はともあれ無事に合流した2人は、早速今回の現場である廃校へと移動し始めた。


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1時間後。

辿り着いた廃校には、事前に聞いていたよりもかなり多くの呪霊達がいた。

おまけにそのどれもがなかなかのレベルで…


「スズ、どう?」

「んー…一部3級4級はいますけど、ほとんど2級呪霊ですね。」

「そっか〜疲れそうだね。」

「ですね。…あ、帰りに甘いもの食べて帰りましょうよ!」

「いいね〜やる気出てきた。」

「ししっ!じゃあササッとやっつけちゃいますか!」

「うん!…あ、スズ。」

「ん?」

「危なそうな時は必ず呼んで。すぐ行くから。」

「はい!ありがとうございます!」


狗巻からの先輩らしい言葉を受け、スズの顔には安心と嬉しさから来る笑顔がこぼれた。

それから2人は廃校内を手分けして回り、呪霊を片っ端から倒していく。

今回は呪霊の数が多いこともあり、スズは陰陽師のもう一つの技である式神を使っての戦闘を繰り広げる。

式神の力と自身の体術を駆使して戦う姿は、五条の弟子を名乗っても恥ずかしくないぐらい逞しいものだった。


そうして戦うこと数時間…

何とかすべての呪霊を倒し、ヘロヘロになりながら校庭に集まったスズと狗巻。

疲れすぎてすぐには帰れなかったので、互いの状況を確認しつつまずは体力の回復につとめた。


「棘せんぱ〜い…疲れました〜」

「俺も疲れた…スズ、ケガは?大丈夫?」

「はい、何とか!棘先輩は?」

「俺も平気。まだ喉潰れてないし。」

「良かったです…!じゃあ領域展開しますね。」

「うん、お願いしま…って、ちょっと待ってスズ。」

「どうしまし…マジか。まだいたよ。」


校庭で一休みしていた2人の前に、どこに隠れていたのか新たに30体程の呪霊が姿を現したのだ。

一旦終わったと思ってからの戦闘再開はなかなかキツイが、スズと狗巻はそれでも何とか立ち上がった。

体勢を整えながら目線を合わせ、2人は落ち着いた様子で言葉を交わす。


「スズ、呪霊1か所に集められる?」

「できます!…五行召喚。"樹木神・クグノチ"!」

『また出番ですか?今日は忙しいですね。』

「ごめんね〜これで終わりだから。そこにいる呪霊をまとめてもらっていい?」

『は〜い。分かりました〜』


スズに"クグノチ"と呼ばれて出てきた式神は、ゆるふわなお嬢様系の女性だった。

だがその見た目に反して繰り出された攻撃は激しいもので、スズの指示通り一瞬にして30体の呪霊を木の枝で縛り上げていた。


「さすが!ありがとね、クグノチ。」

『スズの頼みですから。じゃあまた〜』

「うん、またね!棘先輩、あとお願いします!」

「了解。…"爆ぜろ"。」

「ひゅ〜!相変わらずカッコいいですね!」

「スズのサポートのお陰。ありがと!」


そう言って笑顔でスズの頭を撫でていた狗巻だったが、最後の攻撃のせいで喉が潰れ、不意にガクッと膝をついた。

慌てて傍に寄り添うスズに体を預けると、狗巻は安心したように目を閉じた。

そんな彼を支えつつ、スズは即座に領域展開をする。


「…スズ、呪力平気?」

「あ、はい。私は全然…!だから気にせず休んでください…!」

「うん、ありがとう。……スズの領域、久々に入った。」

「あ、そういえばそうでしたっけ。」

「うん…やっぱ気持ちいいね。」


楽な体勢にするためスズによって移動させられた狗巻は、壁に寄りかかって座りながら穏やかな口調でそう言った。

その領域の気持ちよさとさっきまでの戦いの疲れから、段々まぶたが重くなってくる狗巻。

喉に手をかざして治療しているスズとしては、今にも寝落ちしそうな先輩をハラハラしながら見守っていた。

そんな折、狗巻は不意にパチッと目を開くと、眠そうな表情でスズに声をかけた。


「…スズ〜」

「は〜い。」

「肩借りてもいい?」

「もちろん!ちょっと待ってください、今隣に移動しますから。」


それまで狗巻の斜め前に陣取り治療に当たっていたスズは、彼の申し出により急いで隣に移動した。

スズが座ると同時に狗巻はコテンと肩に頭を乗せ、また静かに話し始める。


「スズってさ…マイナスイオン出てる?」

「へ?急に何ですか。」

「だって近くにいると眠くなるし、何か癒されんだもん。」

「やだ、すごい褒め言葉なんですけど!」

「ふふっ。何その反応。…でも本当だよ。俺、またスズと一緒に任務行けるの楽しみにしてたんだ。」

「本当ですか…!」

「うん。だからスズの意識が戻ってめちゃくちゃ嬉しかったし、安心した。…また一緒に任務行こうね。」

「棘先輩…はい、喜んで!」

「やった〜…じゃあちょっと寝る。」

「はい、おやすみなさい。」

「おやすみ。起きたら帰りに寄るお店決め…よ。」


そう呟いてすぐ、狗巻は猫のようにスズに擦り寄るような仕草をした後、穏やかな寝息を立て始めた。

先輩の貴重な可愛い寝顔をこっそりカメラに収めてから、スズもまた軽く目を閉じ体力を回復させるのだった。



to be continued...



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