お店に到着した2人は、注文したものを互いにシェアしながら楽しいスイーツタイムを過ごす。

そしてスマートに奢ってくれた狗巻にお礼を述べ、スズはこの後別任務がある彼と別れ高専へと戻るのだった。

その道中、彼女のスマホにある人物から電話がかかってくる。


「ん?悠仁?…もしも〜し!」

『あ、スズ!今平気?』

「うん!むしろ悠仁の方が大丈夫なの?任務中でしょ?」

『そう!伊地知さんと一緒に怪しい奴の尾行してんだけどさ、任務終わってたらスズもどうかな〜と思って。』

「え、そんな急に行ってもいいもんなの?」

『…伊地知さん、いいよね?……いいって!むしろ助かるってさ!』

「(伊地知さん苦労してるんだろうな〜)そういうことならお邪魔しようかな!」

『やった!じゃあ今場所送る〜』

「ありがと!よろしくね〜」


そう言って電話を終えると、その後すぐに送られてきた地図と虎杖の呪力を頼りにスズは現地へ向かうのだった。


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30分後…

無事に目的の場所に辿り着いたスズは、嬉しそうな虎杖と安心したような表情の伊地知に迎えられた。

そこで伊地知からザックリ任務の概要と今から実行する作戦について説明を受ける。


「なるほど…その"吉野順平"っていうのが、あそこにいる彼ってことですか。」

「はい。作戦にはこの低級呪霊3体を使います。」

「了解です。…ていうか平日のこの時間に私服なんだ。」

「そうなんだよ。しばらく学校行ってないんだってさ。」

「ふーん…イジメとか、かな。」

「かもな〜」

「ではいきますよ、虎杖君!木下さん!」

「あっ、伊地知さん!!」「タンマ!!誰かいる!!」

「え?」


スズと虎杖の制止も空しく、伊地知が持っていたカゴから3体の呪霊が勢い良く飛び出す。

1体はスズがすぐさま呪力で捕らえたが、残りの2体はそれぞれ好き勝手な方向に飛んで行ってしまった。

内1体は吉野の方へ飛んで行ってしまったため、虎杖が慌てて後を追いジャンピングキャッチを試みる。


「ストォーップ!!!(あ、コイツ…見えてるな。)」

「(今、あの子の呪力上がった!おまけにあの手…何かやるつもりだった…?)」


3体目の呪霊を追いかける伊地知を横目に見ながら、スズは吉野とその担任と思われる人物の方へ飛び込んでいった同期を追いかける。

勢い余って電柱に頭をぶつけた虎杖に笑顔で声をかけながら手を貸すと、2人は揃って吉野の前へと向かった。


「なぁ。ちょっと聞きたいことあっからさ、ツラかして。」

「ちょっと悠仁!それじゃケンカの呼び出しみたいじゃん…!」

「え、そう?じゃあ何て言えばいいかな…」

「うーん…例えば…」

「(! このボタン…)」

「待て。今俺が話してるだろ!!失礼だな。」

「あーいや、かなり大事な用でして。」

「そうなんです。ちょっと急いで確認しなきゃいけないことがあって。」

「大事な用!?急いで確認!?子供が何言ってんだ!!」


自分達の発言を頭ごなしに𠮟りつけてくる担任らしき人物に、スズと虎杖はサッと表情が変わる。

さらに"どこの制服だ"と絡んでくる男にイライラが頂点に達した虎杖は、彼のズボンに手をかけ一気にずり下ろした。

"汚いもの見せないでよ!"と怒るスズにイタズラっ子のような笑顔を見せたかと思うと、次の瞬間虎杖はもの凄い勢いで走り出す。


「何すんだ、このガキ!!やめっ…やめなさーい!!持ってかないでー!!」

「スズ、コイツ持ってて!すぐ戻る!」

「もうー!」

「なんだったんだ…」

「ゴメン、ちょっと待っててもらっていい?」

「え、あ、うん…」


捕まえた呪霊を自分にパスして走り去る同期を、スズは呆れたように見送る。

そして一連の出来事に唖然としている吉野に対して苦笑いで声をかけるのだった。

待つこと数分。

パンツ男を巻くため町内を軽く1周してきた虎杖を迎え、3人は改めて言葉を交わした。


「スズ、お待たせ〜」

「え、はや!!もう1周してきたの!?」

「お疲れ様!」

「おう!そんじゃ行こうぜー。」

「…わざわざあんなことしなくても、僕だけ引っぱっていけば良かったんじゃ…」

「んーまぁ。でもオマエ、アイツ嫌いだろ。」

「! なんで…」

「なんとなく。あっ違った!?」

「違くないけど…」

「だよね〜私もあーいうタイプ苦手…っていうか嫌い。」

「俺も。嫌いな奴にいつまでも家の前いてほしくねーだろ。」

「…うん。」

「でもやり方は他にもあったんじゃない?何であんな人のパンツ姿見なきゃいけないのよ。」

「あははっ!それはゴメンって!」


そう言いながら笑い合う、うずまきのボタンをつけた2人。

自分に対してごく自然に接してくることに、吉野は戸惑いを隠せないでいた。

だが今までの人生で出会ったことのないタイプにも関わらず、その戸惑いは急速に薄らいでいくのだった。



to be continued...



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