スズや虎杖が吉野順平の調査を遂行している頃、七海は地下水路で一連の事件の犯人と対峙していた。
見た目の若さと子供のような思考とは裏腹に、呪霊は例の改造した人間を使いながら七海に攻撃を仕掛けてくる。
自分の術式との相性の悪さを感じながら、七海は襲いかかってきた改造人間をかわした。
と、その改造人間の目にあたる部分から涙と思われるものが流れていて…
普段はあまり感情を表に出さない七海だが、その涙を拭った彼からは静かな怒りが溢れ出ていた。
第23話 幼魚と逆罰 ー伍ー
「…えーっと、アンタ何級?」
「一級。」
「強いわけだ。実験体としてベスト。俺は運がいいね。…感謝するよ。」
「…っ!!」
ニヤリと笑いながら瞬時に七海に近づいた呪霊は、彼の右脇腹に軽く手を当てる。
次の瞬間、七海の体を強い衝撃が襲った。
咄嗟に武器を振り敵と距離を取った彼に、呪霊は楽しげに話しかける。
「急にスピードが上がって吃驚した?自分の魂の形だって変えられるんだよ。
呪術師は呪力で体を守ることはできても、魂を守ることはしてきてない。第一に"己の魂を知覚する"…これができなきゃそれは叶わない。
でも多少は無意識に魂を呪力で覆っているようだね。そうでなきゃアンタは今頃俺の手駒さ。」
「…では常時無意識に魂を呪力で覆っている呪術師には効かないということですね。」
「は?そりゃそうだけど、そんな奴いないじゃん。」
「私は1人知っています。君はスズと会わないことを祈った方がいい。」
「彼女?フン…戯言はいいから続きを始めよう。まぁあと2・3回触れて、人間やめさせてあげる。
こんなもんか一級術師…よく逃げ回ったけど、色々と限界でしょ。」
「フーッ…残念ですが、ここからは時間外労働です。」
ネクタイを緩めながらそう告げた七海は、取り去ったネクタイを右手に巻きつける。
そして突然跳ね上がった彼の呪力に喜んだ呪霊と、再び戦闘を開始したのだった。
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