時は少し遡り、虎杖・スズチームの様子はというと…

吉野の担任を追い返しやっと落ち着いたタイミングで、3人は場所を移動することにした。

未だ呪霊探しに奔走している伊地知を放置して行くことが心配なスズは、自分はここに残るから2人は先に行くように促した…のだが。


「えー…スズだけ残してくの嫌だ。」

「(ふふっ。何か悟先生みたい。)ありがと!でもほら、誰かいないと伊地知さんも心配するでしょ?」

「…伊地知さんなら大丈夫だって!だから一緒に行こ!なっ?」

「おわっ…!ちょ、悠仁!?」


どうしてもスズと一緒に行動したい虎杖は明るい笑顔を見せると、半ば強引に彼女の手を取り歩き出した。

そんなやり取りを交わす2人をどこか羨ましそうな表情で見つめていた吉野もまた、虎杖の後を追うのだった。


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3人が近くの河川敷に到着してすぐ、ズズン…という音と共に軽い地震のようなものが起こった。

"今揺れた?" "震度2くらい?"などと話している虎杖と吉野を他所に、スズは地震が発生したと思われる方向へ静かに目を向ける。

今のはただの地震じゃない…直感的にそう感じ呪力を探れば、呪霊の気配と一緒によく知った呪力を感じ取った。


「(! 七海先生…!やっぱり事件の犯人のとこ行ってたんだ。大丈夫かな…)」

「スズ〜伊地知さん電話出ねーんだけど…って、どしたの?」

「え、あ、ううん!何でもない!それより電話繋がらないの?」

「うん、全然ダメ。もう俺が聞いちゃっていいかな…」

「そうだね〜いつまでも彼を引き留めとくわけにもいかないし。」

「だよな〜」

「?」


吉野に対し何をどこまで話していいのか迷う虎杖と、作戦に途中参戦したため下手にアドバイスができないでいるスズ。

2人がコソコソと言葉を交わしている間、取り残された吉野は少し前に出会った呪霊…真人との会話を思い出していた。


"うずまきのボタンをしている学生に会ったら仲良くするといい。彼らは呪術師なんだ。きっと順平と気が合うよ。"


「(でも呪術師って真人さんの敵だよな…)」

「あーっ!!もういいや、聞いちゃえ!!スズ、ダメだった時は一緒に怒られて!」

「しょうがないな〜…今度また朝ご飯ごちそうしてよ?」

「! おう!いくらでも!ありがと、スズ!」


そう言って互いに笑顔を向け合うスズと虎杖は、ポケットに入れていた低級呪霊を見せながら吉野に声をかける。

真人からは気が合うと言われていたが、やはり未知のタイプの人間と接するため吉野は警戒レベルを少し上げた。


「なぁ、この前オマエが行った映画館で人が死んでんだ。」

「!」

「なんか見なかった?こういうキモイのとか。」

「もしかしたらもう少し大きくて、変な言葉を呟いてるタイプの奴かもしれないけど…どうかな?」

「…いや、見てないよ。そういうのハッキリ見える様になったの最近なんだ。」

「「そっかぁ…」」


見事なシンクロで肩をガックリと落とす姿に、吉野は何だか申し訳なくなる。

だがそう思ったのも束の間…彼はすぐに表情が戻った2人に挟まれる。

そしてごくごく普通の高校生らしい雑談に花を咲かせるのだった。


「じゃあもう聞くことねぇや!!」

「えっ、もう?」

「うん。スズなんかある?」

「ん〜…いいかな。ってかそもそも何聞いたらいいか良く分かってないし。」

「俺が急に呼び出したからな〜あ、そだ。一応俺の上司?みてぇな人が来るまで待ってくんない?」

「いいけど…」

「ごめんね。たぶんそんなには遅くならないと思うから。」

「あ、うん。大丈夫だよ。」

「なぁ、映画館で何観てたの?」

「昔のリバイバル上映だから、言っても分かんないよ。」

「いーから!いーから!」

「"ミミズ人間3"。」

「うわっ、あれか〜」「あれ超つまんねぇよな。そのせいで何回殴られたことか。」

「(2人とも観てるんだ…)本当にね…でもスプラッタ映画だからさ、その描写以上の内容を求める僕達が悪いのかもね…でも2「でも2はちょっと面白かったな!!」

「! そう!!そうなんだよ!!2だけは楽しみ方があるんだよ。」

「え〜そう?私にはどっちも気持ち悪い映画にしか思えなかったけど。」

「まだまだだな〜スズは!」

「ポイントになるところ教えるから、もう一回観てみてよ。」

「観るなら3人で観たい!解説してもらいながら観た方が楽しそうだし。」


スズのその言葉に虎杖は当然賛成、吉野もまた嬉しそうな顔を見せた。

傍から見たら、どこにでもいる高校生が河川敷でただダベっているようにしか思えないだろう。


それからも映画の話で盛り上がっていた3人を、黒づくめの服を着た怪しい男が静かに眺めていた…



to be continued...



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