吉野家の一切合切を伊地知に丸投げすると、スズは猛ダッシュで里桜高校へ向かった。
そして現地に到着すると、勢いそのまま帳の中へ走って行った…が。
「痛っ!!」
どうしたことか帳に拒絶され、顔面への強い衝撃と見事な尻もちを喰らったスズ。
あとで確実にコブになるであろうおでこをさすりながら、彼女は涙目で帳を見上げた。
と、そんなスズを気遣うかのように1本の電話がかかってくる。
痛みに気を取られ相手の名前を確認せずに電話を受けると、ついさっき聞いたばかりの声が聞こえてきた。
第26話 いつかの君へ
「…もしもし?」
『スズ〜今何してる〜?』
「え、先生!?どうしたんですか!?」
『今トランジットの待ち中なんだけどさ、何か1時間以上あって暇だから電話してみた。そっちは?何か声暗かったけど平気か?』
「(相変わらず鋭いなぁ…)今、朝言ってた帳の場所にいるんですけど何故か中に入れなくて…思いっきり激突して負傷しました。」
『アハハ!大丈夫かよ?』
「大丈夫じゃないですよ〜…おでこに大きいコブできましたから。」
『(あー…早く会いてー…)じゃあ…帰ったら撫でてあげる。』
五条の優しい声のトーンに、スズは電話越しにまた顔を赤くする。
それからしばらく他愛のない会話をしていた2人だったが、自分が今任務中だということを思い出したスズが質問を投げかける。
内容は、今目の前にある帳のこと…
「先生、帳に入れない理由って何か思い当たりますか?」
『ん−…帳降ろしてるのは敵側なんだよね?』
「はい。」
『だとしたら…1つ考えられるのは、スズに呪力があるからじゃない?』
「へ?どういうことですか?」
『だって敵からしたら、スズや俺みたいに呪力の強い奴が来たら嫌でしょ?絶対自分達のこと邪魔してくるんだから。』
「あ、確かに…」
『だから呪力のある奴は排除して、呪力の弱い奴だけ入れるようにしてるんじゃないかな〜って。』
"試しに呪力0にして手入れてみな。"
師匠からの的確で具体的なアドバイスを受け、スズはすぐにそれを実行に移す。
その結果は…?
「あ、入れた!先生、すごい!」
『知ってる〜』
「ふふっ。ありがとうございます!助かりました!」
『どういたしまして。…今度はガッツリ俺との時間作れよ。』
「! は、はい…!」
『ん、約束な。』
不意打ちの一言で今朝の一連の出来事を思い出し、ドキドキとうるさい心臓を落ち着かせるのに必死なスズ。
そしてそんな彼女の様子を思い浮かべた五条もまた、通話が終わったスマホを見つめながら口元を緩めるのだった。
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