一方の虎杖はといえば、そちらからは何故か宿儺の声も聞こえてきていた。

もちろん彼は事態を収拾させるために現れたわけではない。

それはスズには絶対に向けないような顔と声からも明らかである。

そして理由は分からないが、真人もまた笑い声を上げていて…

元吉野だった呪霊を前に立ち尽くしている虎杖を、更なる絶望へと追いやった。


「ゆ…うじ…な…んで?」


スズが虎杖の元へ駆けつけた時には、吉野はそう言って息を引き取っていた。

目の前で友人の姿を変えられ、成す術もなくそのまま死んでいく…

普通の人間なら正常な状態ではいられないだろう。

呪霊に対し五芒星を切ったスズは、彼の精神状態を心配しながら静かに同期の方を伺った。

その目には、スズが虎杖に対して今まで見たことのないような感情が宿っていた。


「あっ、もう死んだ?ちょっと乱暴に形変えたからね。こんなもんかな。」

「…順平のこと頼む。」

「うん…」


スズに一言告げた次の瞬間、虎杖は強烈な打撃を真人に喰らわせた。

顔面に受けた攻撃により鼻血を流した真人は、何故か酷く驚いていて…

血を拭いながら何かを考えているようだった。


「(どういうことだ!?魂の形ごと叩かれた…そうか!!虎杖悠仁は"器"!!常に肉体の中に自分以外の魂が在る状態。だから自然に…)

 知覚しているのか…(魂の輪郭を!!木下スズも同じ原理か…?いや、違う…アイツの中にはそんなものはない。じゃあ何故?)」

「ブッ殺してやる。」

「悠仁…!!」

「"祓う"の間違いだろ、呪術師。」


今までの優しく穏やかな虎杖からは想像もできないような攻撃的な言葉。

纏う空気も溢れ出る感情も、全てが今までとは違う。

そんな彼の姿を、スズは不安を大きくしながら見つめるのだった。



to be continued...



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