虎杖悠仁は自らの命を顧みない。
人質による外的な"縛り"は夏油に止められてる。
ならば殺したい程憎い相手を殺せない時、彼は宿儺に頼るだろうか。
順平で足りなければ、生徒を1人ずつ目の前で変えればいい。
利害を超えた憎しみで宿儺との交渉を促し、虎杖悠仁に"縛り"を科す。
それで宿儺を仲間に引き入れる確率が上がれば万々歳。
だがこれは俺が彼より強いことが大前提。
1つ気がかりなのは…木下スズとかいう俺の術式が効かない女。
体の中に宿儺のような存在がいるわけじゃないのに…
オマケに彼女の術式は回復…俺がどれだけ虎杖を攻撃しても回復させられちゃ意味がない。
こいつら、なかなかどうして……天敵。
第28話 殺してやる
「スズ、俺アイツをぶっ潰したい。フォロー頼んでいいか…!」
「もちろん!ただし冷静に対応すること。無茶しそうだったら止めるからね。」
「! 分かった。」
そう言って視線を合わせた2人は、翼を生やし上の階へ逃げていく真人をもの凄いスピードで追っていった。
虎杖の後ろを走っていたスズは、後方から彼の傷を治しつつ声をかける。
「悠仁、アイツ魂の形を変えられるって言ってた!」
「魂の形…」
「たぶんそれは他人のだけじゃなくて、自分の形も自由に変えられるんだと思う!」
「さっきからコロコロ形が変わってんのはそのせいか!」
「うん。だから今見てる姿に騙されないで…!」
「了解!」
「(ちっ。あの女、やっぱり邪魔だな…先に潰すか。)」
こちらに向き直った真人は、フォークのような形に変えた右手をスズの方へ向けて放つ。
治療に気を取られ一瞬動きが遅れた彼女の体に真人の右手が突き刺さる寸前…
虎杖が目にも止まらぬスピードでスズの方へ動いた。
「スズ!!」
「うわっ…!ありがと、悠仁!助かった…!」
「平気か!?ケガは?」
「大丈夫!…あっ、悠仁後ろ!!」
スズを横抱きにして真人の右手を回避した虎杖は、彼女の元気な返事を聞いて少し笑みを見せる。
が、相手の攻撃はそれだけでは終わらなかった。
繰り出した右手を戻す勢いで、続けて虎杖の背中に攻撃を仕掛けてくる真人。
虎杖の背中越しにそれを見たスズが咄嗟に呪力の壁を作り直撃は避けたものの、2人揃って窓の外へと吹っ飛ばされてしまう。
持ち前の運動神経でスズを抱えたまま無事に校庭へ着地した虎杖は、さっき自分が言われた言葉をそのまま彼女へ返した。
「助かった!!ありがとな、スズ!」
「うん!」
「…アイツ、スズのこと狙ってる。だから少し離れたとこからフォローしてくれるか?俺が仕掛けた戦いでスズにケガさせたくない。」
「悠仁……分かった。ケガはすぐ治すから、ガンガン行ってこい!!」
「! おう!!」
スズの力強い言葉に背中を押された虎杖は、次々に両腕の形を変える真人に真正面から向かって行く。
だが呪力を込めた拳を相手に打ち込んだ次の瞬間、真人はまたも形を変え、腹から何本もの棘を生み出した。
腕の変化に集中していた虎杖はその攻撃をまともに喰らい、口から血を吐いてしまう。
「がっ…」
「悠仁!!」
「君じゃ俺に勝てないよ。さっさと代わんなよ…宿儺にさ。」
そう言って虎杖の体に触れながら術式を発動する真人。
望み通り彼の目の前には宿儺本人が姿を現すが、それは思っていた展開とはどこか違うようだった…
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