真人の前に現れた呪いの王・両面宿儺。

だがそれは虎杖と宿儺が入れ替わったわけではなく、王の魂に真人が触れたことで発生した出来事だった。


「俺の魂に触れるか…共に腹の底から小僧を嗤った仲だ、一度は許す。二度はない。分を弁えろ、痴れ者が。」

「!」

「それと…オマエは俺の女にやたらと手を出してるな。万が一にもスズに傷を負わせてみろ…俺はオマエに何をするか分からんぞ。」


最後にそう言って、宿儺は真人の前から姿を消した。

そしてそれと時を同じくして、虎杖の背後にいたスズの体から魂が抜ける。

ドサッとなかなかの音がしたにも関わらず、虎杖は真人との戦いに集中して気づいていない。

そんな2人の戦いを、スズは薄れゆく意識の中で不安そうに見つめていた。


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意識が戻った時、最初に視界に入ってきたのは見覚えのある着物の裾だった。

まだ覚醒していない状態でその持ち主の名を呼べば、すぐに足音が近づいてくる。


「…宿儺?」

「! …起きたか。久しぶりだな、スズ。」

「うわっ、ちょ、近い…!」

「オマエが俺の名を呼んだから来ただけだ。」


仰向けになっていたスズの顔の横に手をつき、押し倒したような形で声をかける宿儺。

いきなり間近に現れた王の姿に、スズの脳内は一気に覚醒した。

逃げようと上半身を起こせば、顔と顔がもっと近づいてしまう。

もちろん仰向けの状態で移動できるわけもなく…

どうすることもできないまま、スズはドキドキしながら王との会話を続ける。


「く、来るならもっと普通に来てよ…!」

「それは無理だな。」

「何で?」

「オマエと過ごす久しぶりの時間だ、普通でいられるわけないだろう。」


片手でスズの髪を触りながら妖艶な笑みを見せる宿儺は、さっきまでの邪悪な顔が嘘のように色っぽい。

最近某最強呪術師にも似たようなことを言われたような…と頭の片隅で思いながら、スズは近づいてくる宿儺の顔を両手で挟む。

髪を触っていた手を愛しの彼女の手に重ねた宿儺は、穏やかな視線をスズに向けた。


「ん?どうした?今日は積極的だな。」

「違う!そ、そういうんじゃなくて…!……近いから。」


そう言って片方の手で顔を隠すスズの姿は、王の高ぶった感情を落ち着かせるのに十分だったようで…!

満足そうな笑みを見せると、宿儺はサッとスズから体を離し彼女を起き上がらせた。

そしてそのままギュっと抱きしめる。


「す、宿儺?」

「安心しろ。オマエをいきなり襲ったりはしない。少しからかいたかっただけだ。」

「本当に…?」

「あぁ。オマエは初心だからな…ちゃんと順を追って襲う。」

「結局襲ってるじゃん…!」

「うるさい。これでも大事にしてるつもりだ。それより…少し静かにしてろ。」

「へ?」

「久しぶりに惚れた女を抱きしめてるんだ。邪魔するな。」

「!」

「……スズ。」

「な、何?」

「俺の女になれ。」


まっすぐに目を見つめながら彼なりの愛の言葉を告げた宿儺は、少し笑みを見せた後もう一度スズを強く抱きしめた。

そしてすぐに返事ができずアワアワしている彼女を落ち着かせるように、頭を優しくポンポンと撫でる。


「すぐに答えを聞かせろとは言わない。他に気になる男がいるなら今はそれでもいい。ただ…」

「?」

「オマエを俺に惚れさせる自信はある。だから覚悟しておけ。」


耳元で聞こえるその自信に満ちた声に、スズの心臓はまた一段とうるさくなった。

五条から告白を受けた時も同じようなことを言われていた彼女。

呪いの王と現代最強呪術師から強い愛情を向けられ、相当な覚悟を強いられているスズが、もしかしたら一番の強者なのかもしれない。



to be continued...



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