スズが宿儺の生得領域でラブコールを受けていた頃、虎杖の方はピンチに陥っていた。
それまで攻めに攻めまくっていたのが一転…
突如視界から消えた真人に背後を取られ、一気に形勢が逆転していた。
そんな虎杖の前に、見慣れた後ろ姿が現れる。
「ナナミン…!!」
彼を助けたのは、別任務で合流が遅れていた七海だった。
第29話 成長
真人の一撃を退けた七海は、相手から視線を外さず静かに虎杖へ声をかける。
自分が止めたにも関わらず無謀にも1人でこの場に来た彼に対し、大人としていろいろと言いたいことがあるようだった。
「説教は後で、現状報告を」
「2人…助けられなかった…」
「(どこまでも他人のこと…)まずは君の体のことを」
「俺は平気。いっぱい穴空いてっけど、前半の傷はスズに治してもらってる」
「…平気の意味」
「あと学校の人らは全員体育館でぶっ倒れてたけど、そっちもスズがどうにかしてくれた」
「そうですか…で、そのスズはどこにいるんですか?」
「えっ…あれ?少し離れたとこからフォローを頼んでて…あっ!!」
辺りを見回した虎杖は、自分が今いるところから少し離れた場所に倒れているスズを発見した。
慌てて駆け寄り名前を呼んでも、彼女の意識は一向に戻らない。
眠っているわけでも、死んでいるわけでもない…スズのこの微妙な状態を虎杖は過去に一度だけ見たことがある。
「…宿儺だ。アイツがスズを連れてったんだと思う」
「以前意識を失った時と同じということですか。無事は無事なんですね?」
「うん、そこは大丈夫。宿儺は絶対にスズを傷つけたりしない」
"スズ、ごめん。さっさと終わらせてすぐ戻ってくるから"
虎杖はスズを安全な場所に運ぶと、そう言って彼女の手をギュっと握った。
それから表情を一変させ真人の方へ向き直ると、相手は待ちかねたように声を発した。
「なんだピンピンしてるじゃん、七三術師。お互い無事で何よりだね。ハグでもするかい?再会を祝して。
それとアンタの顔見て思い出したよ。前に言ってた"常時魂を呪力で覆っている呪術師"って、あの木下スズって女でしょ」
「…だったら?」
「アイツに俺の術式が効かない理由が分かった。常に魂を守られてたら、そりゃ効かないよね。厄介な奴がいたもんだよ」
「だから言ったでしょう。彼女に会わないことを祈った方がいいと」
そこまで喋って、七海は真人が鼻血を出していることに気づく。
以前自分と戦った時にはなかった現象であり、そのことから七海は虎杖と真人の間に天敵関係があると踏んだ。
自分の攻撃は効かないが、虎杖なら相手の術式に囚われることなく攻撃ができる。
そう判断し、七海と虎杖は共同戦線を張った。
そうして虎杖と七海を相手に戦いを続ける中で、真人は突然口から異物を吐き出す。
それは七海との戦闘でも繰り出してきた改造人間のストックだった。
"短髪のガキを殺せ"と命じ呪力を込めれば、改造人間達は真っ直ぐに虎杖へ向かって走り出した。
一瞬表情が曇る虎杖を見て、真人は確信する。
「やっぱり…アイツ人間殺せないだろ」
戦闘を避けるように校舎の上へと向かう虎杖に、七海は少し視線を向けるのだった。
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