校舎の上に辿り着いた虎杖は、向かってくる子供のような改造人間に戸惑いを隠せずにいた。

数は3体、それぞれの戦闘能力はどれも大したことはない。

普通の呪術師であれば何の苦もなく倒せる相手だった。

だが…


「あ…そぼ…」

「…!」


子供の声でそう言われ、虎杖は攻撃の手が止まってしまう。

その隙に他の改造人間が片腕と足にくっつき、あっという間に倒されてしまった。

と、そんな彼の耳に苦しそうな声が聞こえてくる。


「お……がい…ころして…」


改造されても尚残っていた自我が発した言葉を機に、虎杖の中でいつかスズに言われた言葉が思い出される。


"相手を"殺す"んじゃなくて、"浄化する"っていう気持ちでやりなさい。"

"陰陽師や呪術師の力を使えば穏やかな状態で死を迎えられるから…。"


人の死を乗り越えるために、スズの両親が彼女に送ったアドバイス。

それを今度はスズが虎杖へ…

"もっと頼ってくれていい"と優しい笑顔を向けてくれたスズを思い出しながら、虎杖は目の前の改造人間に拳を振るった。


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虎杖が校舎の上で葛藤していた頃、七海と真人の戦いも状況が変わっていた。

変形した大きな手で七海を押さえつけていた真人は、自分が改造人間を差し向けた人物について話をしていた。


「次はアンタと闘わせようと思うんだ。今度は泣いちゃうかな?現実と理想の擦り合わせができていない馬鹿な子供ガキは。」

「それは違います。彼は今まさにその擦り合わせの真っ最中。どちらかと言えば、馬鹿はアナタです。」


七海がそう言った直後、校舎の上から話題の彼がものすごい勢いで降りてくる。

その目はさっきまでと違い、何かを乗り越えたような強い光を宿していた。

再び合流した2人は、そこから息の合った怒涛の攻撃を繰り出す。

だが一方的に殴られていた真人は自分の死を実感しつつも、ある1つのインスピレーションを得ていた。

そして…


「領域展開…"自閉円頓裹"」

「クソッ。」

「今はただ君に感謝を。」


命の瀬戸際で領域展開を会得した真人。

彼の領域に取り込まれた七海は、顔をしかめながら小さく言葉を漏らすのだった。



to be continued...



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