次に目が覚めた時、スズは植え込みの横にある柔らかい芝生の上に横たわっていた。

少しでも体が痛くないようにと虎杖が選んだその位置は、彼の優しい性格がよく表れた場所だった。

体を起こし辺りを見回したスズは、すぐさまその彼の元へ駆けつける。


「悠仁!!」

「! スズ…!大丈夫なのか!?」

「うん、私は全然!運んでくれてありがとう。それより七海先生が…!」

「そうなんだ。あのツギハギが突然この黒いやつ出してきて…ナナミンだけ閉じ込められた。」

「これたぶんアイツの領域展開だと思う。」

「領域展開って、あの五条先生がやってたような…?だったらナナミンがヤバイ!!」


そう言って焦ったように黒い球体を殴り続ける虎杖の手を、スズは優しく包み込む。

"ちょっと深呼吸しよ?"と言って彼の手の傷を治すスズを見つめながら、虎杖は言われた通り深く息を吸って吐いた。

そうして落ち着きを取り戻した虎杖は、同級生の存在に安心したのかフッと足の力が抜けスズにもたれかかってしまう。


「! わりっ…!」

「そういえばお腹に穴空いてたんだったね…!話したいこともあるし、1回座ろ。」

「うん…」


素直に腰を下ろした虎杖のお腹に手を当てながら、スズは領域展開について五条から教えてもらったことを話し始めた。

結界術というのは中からの耐性を上げる程、外からの力には弱くなるということ。

おまけにツギハギ呪霊の領域展開は、五条や宿儺のものに比べるとまだまだ荒さが残っているということ。


「…じゃあ、俺もあの中に入れるってことか?」

「うん!でもあの中にどんな術式が展開されてるか分かんないから、私が悠仁の周りに呪力で壁を作る。その状態で一緒に突入しよっ!」

「待って。それってスズは守られてんの?俺だけが守られてるとかダメだからな!?」

「大丈夫だから…!悠仁はツギハギの呪霊のことだけ考えてればいいの!」

「…分かった。じゃあ俺がスズを背負う。」

「えっ?な、何言ってんの?」

「俺が背負った状態で壁作れば、スズも守られるだろ?そうと決まれば早く行こうぜ!」


戸惑うスズを他所に、虎杖はサッと彼女を抱えるとあっという間に球体の頂点に立った。

それから自身の作戦通りスズを背負い声をかける。


「スズ、準備いいか!?」

「準備はできてるけど、本当にこの体勢で大丈夫!?」

「大丈夫!」


強い眼差しで後ろを振り向く虎杖に、スズもまた頷きを返す。

そして彼の背中にしがみつきながら、硬度を上げた呪力で自分たちを囲うように周りを包んだ。

それを確認すると、虎杖は呪力を込めた拳を領域展開にぶつけたのだった。


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"領域"は"閉じ込める"ことに特化した結界。逆に侵入することは容易い。

何故なら侵入者にメリットがない。

"無量空処"や"自閉円頓裹"のように、相手を領域に引き入れた時点で勝ちが確定するとなれば尚更…

だが虎杖悠仁の裡には…触れてはいけない"モノ"が在る。


「言ったはずだぞ、二度はないと。それに…俺の女に手を出したら何をするか分からんと。」

「「「!!」」」

「(女の方は言いがかりだろ…!)」


天上天下唯我独尊、己の快・不快のみが生きる指針。

両面宿儺…彼にとって、七海が死のうと真人が死のうとどうでもいい。

唯一の好奇は伏黒ただ一人…唯一の関心もまたスズただ一人

それ以外は、心底どうでもいい。


スズを背負った虎杖が領域内に入った瞬間、真人は意図せず宿儺の魂に触れてしまう。

王の逆鱗に触れた真人は、彼の手の一振りで大きな傷を負ったのだった。



to be continued...



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