スズと虎杖が領域に入った瞬間、真人の左肩から大量の血が噴き出す。

ガクッと膝をついた真人に対し、地面に着地した虎杖はすぐさま行動を起こした。


"殺せる"


その想い1つで、彼は真人との距離を一気に詰める。

これが最後の好機チャンス…駆け引きはもういらない。

そこにあるのは、限りなく透明な殺意だった。





第31話 また明日





最後の呪力を振り絞って体を巨大化させた真人。

スズと七海が見守る中、虎杖はその巨体に逕庭拳を打ち込んだ。

だがその結果は、思っていたのとはだいぶ違うものだった…

パァン!という破裂音と共に、虎杖の目の前にあった巨体は風船のようになくなったのだ。


「七海先生、排水溝の方です!!」

「バイバぁ〜イ。」

「待て!!」

「楽しかったよ。」


いち早く呪力の動きを察知したスズが声を上げれば、七海がすかさず指示された方へ向かう。

叫ぶ虎杖を嘲笑うように、七海が排水溝に一撃を加えた時…既に呪霊は姿をくらましていた。


「チッ…猪野君、本丸が排水溝から逃走しました。…えぇ、私といた地点から東南に向けて虱潰しにお願いします。今なら君でも祓える。」

「七海先生、悠仁が…!!」

「虎杖君!!」


度重なる出血と大量の呪力消費、それに精神的疲労も加わり、虎杖の体はもう限界をとうに超えていた。

スズによる治療も、時間が十分に取れなかったせいで完全回復とはいかなかったのだ。

動かない体に怒りを覚えながらその場に倒れ込んだ虎杖は、スズの領域展開の中でスッと意識を失った…


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一方、下水道に避難した真人はといえば…

宿儺にやられた傷を押さえながら、笑顔を見せていた。


「(あれが呪いの王・両面宿儺…現時点では漏瑚より呪力の総量では劣るはず。なのにあの存在感…魂の格が違う。

 これは確信だ。俺達が全滅しても、宿儺さえ復活すれば呪いの時代がくる。…しかし参ったな。俺は今、どうしようもなく…虎杖悠仁を殺したい。)

 うーん、もどかしー!!でもまぁいっか!!肉体からだと違って、魂は何度でも殺せる。」


そうして更に笑みを深くする真人だったが、ふともう1人の人物について考え始める。

それは自分の術式が効かない不思議な少女のことだった。


「(あのスズって女…回復の術式だけでも厄介なのに、呪力で体全体守ってて、おまけに宿儺まで味方につけてるとか有り得ないだろ。

 夏油は打つ手間違えたら痛い目に遭うって言ってたけど…でも考え方次第では使えるんじゃないか?

 スズを上手く利用すれば、意外と簡単に宿儺を味方にできたりして…!夏油に相談してみよっかな〜)」


そんなことを考えながら、真人は自分達のアジトへと帰っていくのだった。



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