虎杖の治療を終え部屋を出た時には、夜もすっかり深くなっていた。

少し呪力を使ってソッコーで家に帰ったスズは、すぐにお風呂に入り寝る準備を整える。

そしてルーティンである寝る前の読書タイムを楽しんでいると、不意に見知った呪力を感知した。

その呪力の持ち主は、今日はまだ現地にいるはずで…

帰ってくるのは明日の午前中だったはず…

だが呪力は明らかにこの家に向かって来ていた。

まさかと思いつつ、スズは半袖短パンのパジャマ姿で慌てて玄関の方へ向かった。


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「ではここで失礼します。任務お疲れ様でした。」

「お疲れ〜」


自宅の近くで補助監督が運転する車から降り立った男は、キャリーケースを引きながら目隠しを外して歩き出す。

数分もしないうちに、自宅のどでかい門が見えてきた。


「(疲れた〜早く風呂入って寝よ。スズは…さすがにもう寝てるか。)」


そんなことを思いながら、疲労のせいで自然と下を向いていた目を上げれば、自宅の門前に怪しい人影を発見する。

その人物はキョロキョロと道路を見渡し、誰かを待っているようだった。

と、不意にその人物と目が合う。


「あっ!やっぱり悟先生だった!」

「! マジかよ…」


自分の姿を確認した途端、嬉しそうにこちらに手を振る想い人に、五条は居ても立っても居られなくなる。

引いていたキャリーケースをその場に投げ捨てスズの方へ走っていくと、勢いそのまま彼女を抱きしめた。


「おわっ…!」

「スズ…!オマエ、何で起きてんだよ。いつもはもう寝てんじゃん。」

「寝ようと思ってたんですけど、先生の呪力感じたから…!」

「あーもう……門まで出迎えとか最高過ぎんだけど。」

「そ、そうですか…?」

「うん、疲れ吹っ飛んだ。ありがと。」

「いえ…!」

「っと、言うの忘れてた。…ただいま、スズ。」

「おかえりなさい、悟先生!」


抱きしめていた力を緩め、五条が視線を合わせてそう言えば、スズもまた最高の笑顔を返す。

彼女を見る五条の表情は本当に嬉しそうで、さっきまでの疲れた顔が想像できない程だった。

この目の前の少女に会いたいがために任務を早く終わらせ、予定を1日繰り上げて帰国した五条。

だが時間が時間だから、まさかその日のうちに会えるとは思っていなかったのだ。


「帳にぶつけたとこ、ちゃんと治したか?」

「はい、バッチリです!」

「な〜んだ。一晩中撫でてやろうと思ってたのに〜」

「なっ…!い、いいですよ!それよりほら、疲れてるんですから早く中入りますよ!」

「は〜い。…あ、待って。キャリーケース取ってくる。」


そうしてほったらかしになっていたキャリーケースを手に取ると、2人はワイワイと話しながら家の中へと入っていった。

そして洗濯物や諸々の備品をお手伝いさんにパスすると、五条はお土産を入れた袋だけを持ってスズと共に自室へと向かう。


「お土産たくさん買ってきたけど、渡すの明日でいい?」

「はい。ありがとうございます!でも…一番のお土産はもう貰ってますけどね。」

「へ?」

「え、忘れちゃったんですか?先生が無事に帰ってきてくれるだけで十分だって言ったじゃないですか。」

「!」

「…あ、もちろん他のお土産もちゃんといただきますけどね!」


ニコニコと楽しそうにそう言って、スズは五条の少し前を歩く。

彼女としては純粋に師匠の無事を願って出た言葉だったが、それが五条にとってはどうしようもなく刺さったようで…!

それもそうだろう。

想いを寄せている人物から、"貴方が一番のお土産"なんて言われたら嬉しいに決まっている。

門前での出迎えに端を発した一連のサプライズで上がりまくった五条のテンションは、このタイミングで振り切った。

後ろからスズを抱きしめると、五条は彼女の耳元で声を発する。


「おっと…!せ、先生?」

「…この後の時間は、俺にくれるんだよな?」

「え、あ、はい…先生が、ご希望なら…」

「ご希望に決まってんだろ。そのために早く任務終わらせたんだから。」

「はい…!」

「俺、明日オフで時間たっぷりあるからさ……一番のお土産、たくさんあげる。」

「えっ!?」

「全部受け取るまで解放しないからそのつもりで。」


思わぬ発言にぐるっと首を回して五条を見つめるスズ。

そんな真っ赤な顔の想い人のおでこを優しくつつくと、五条は怪しい笑みを見せながら自室に入って行くのだった。


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3日後…


「スズ〜ちゃんと悠仁のこと起こしてきた?」

「起こしましたよ〜返事もあったし。二度寝しちゃったかな…」

「…来たようですよ。」


傷も完治し、完全復活を果たした虎杖。

五条と七海、そしてスズの前に現れた彼の目には、今までにない強い光が宿っていた。



第1章 fin.



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